2022年10月4日

P-CFO 岩城 一成さん

ミッション:地球環境に良い事業の創出
ビジョン :80歳になってもマッチョなジジイ

プラスチック関連製品のメーカー勤務
新規事業創出の担当部長
中小企業診断士
岩城 一成 (いわき かずしげ)さん

今回ご紹介するのは、パートナーCFO養成塾第4期生(2021年6月~11月)の岩城一成さんです。

大手化学メーカーに勤務する中、“自分は社外で通じるのか?”中小企業診断士の資格を取得、さらにプライベートでは「80歳でもマッチョ」を目指して日々体作りに励むなど、公私ともストイックに過ごされている岩城さん。
勤続30年で「自分への投資」としてP-CFO養成塾を受講され、受講期間中にプラスチック関連製品のメーカーに転職されました。50代で転職され、新たな業界で新規事業を一から手掛ける岩城さんに、これまでのキャリアと今後の展望などについて伺いました。

【プロフィール】
東京都生まれ。大学卒業後、大手化学メーカー(A社)に入社。人事部、営業や生産管理、新規事業開発、メディカル部門など幅広く経験。昨年(2021年)、プラスチック関連製品のメーカー(B社)に転職し、環境関連の新規事業を担当。
保有資格は中小企業診断士(現在、活動は休止中)。
早稲田大学ではアナウンス研究会に所属。

30年勤務後、50代で初めての転職。新天地では地球環境に良い新規事業創出に奮闘中

現在の勤務先について教えてください。

現在の職場B社は、プラスチック製品の開発から製造までをしているメーカーです。プラスチックの素材自体にいろいろな機能材料を塗ったり貼ったりする技術を駆使して製造する、B to Bの会社です。

元々はプラスチック素材を使った包装材料がメインでしたが、最近はパソコンの液晶の偏光板の保護フィルムや絶縁材などの電子材料の分野が急速に伸びています。

時代に合わせて製品構成も変えているんですね。
岩城さんは昨年現在の勤務先に転職されたそうですが、ご担当の仕事はなんでしょうか。

プラスチックは非常に便利なものですが、最近は地球環境への関心の高まりからか、報道などではプラスチックは地球環境に与える影響は良くない、という側面が強調されることが増えました。

そこでB社では昨年、地球環境に良い事業を探索・創出する部署が新設されることになりました。前職のA社もメーカーで新規事業や営業などの経験を積んできたこともあり、B社ではその新設部署の担当部長として転職することになりました。

実は奥が深いプラスチック製品

プラスチック製品は、レジ袋の有料化(2020年7月)や、ストローやスプーンの削減を義務付ける法律が施行(2022年6月、プラスチック資源循環促進法)され、削減やリサイクルの動きも加速しているように思いますが、専門家からみてどのような状況でしょうか。

プラスチック製品のことを知っていただくいい機会でもあるので、少し専門的になりますがご説明します。

プラスチック製品というのは、一つの素材だけで構成されているわけではなく、ポリエチレン、PETなどのプラスチックの様々な素材を何重にも貼り合わせて作っています。貼り合わせるための接着剤も構成物の一つです。

様々な素材を貼り合わせることで強度や密閉性を高めて、水分の侵入や蒸発することを防いだり、損壊を防いだりしています。 そのため、プラスチック製品そのままだとリサイクルには向かないので、PETフィルム、ポリエチレンなど、プラスチックの素材ごとに分別して回収する必要があります。

ゴミの分別はいい加減にやってはいけないんですね。

はい。
実は、ポリエチレン、PET、ポリプロピレンなど単一の素材だけで作られている製品のことを「モノマテリアル」といいます。
各社とも研究開発と商品化にしのぎを削っているところですが、一番有名なモノマテリアル製品はPETという素材でできているPETボトルです。

しかし、飲料のPETボトルの附属物であるラベルとキャップはポリエチレンなので、リサイクルするときはそれらを外してPETボトル本体だけにしなければなりません。

PETボトルの分別回収のときにラベルとキャップを外すのは、そのような意味があったんですね。

日本国内におけるPETボトルのリサイクル率は既に高いのですが(注1)、これを2030年までに100%にしようと各飲料メーカーが技術開発を進めています。

(注1)2019年のPETボトルの回収率は93.0%、リサイクル率は85.8%(出典:PETボトルリサイクル推進協議会)

岩城さんのミッションは、そのようなプラスチックの技術開発やリサイクルに関する状況も見ながら、地球に優しい事業を創出することなんですね。

私の場合は、プラスチックにこだわっているわけではなく、「プラスチックに関わらず」に地球に良いことをしようということなので、フリーハンドあるいはかなりざっくりですね(笑)

技術者と働く中で見つけた自分の役割:技術の種を見つけて技術者にぶつけ、可能性を一緒に見極める

具体的にはどのように事業を創出されようとしているのでしょうか。差支えのない範囲で結構なので、教えていただけますか。

前職時代もそうですが、私は技術職ではなく営業系・事務系の人間なので、技術についてはある程度まではわかりますが、その根底の部分、たとえば理論などは正直言ってわからないことが多いです。
しかし、これまでのキャリアで、世の中に転がっている事業や技術の種を見つけることは得意です。社内はもちろん、展示会やセミナー、そしてメディアの記事までいろんなところに技術の種は転がっています。

私は見つけた技術の種を技術者たちにぶつけて、本当に技術的にみて差別性や発展性があるかどうかを一緒に見極めながら、仕事を進めています

幼少期からの夢が高じて、大学時代はアナウンス研究会へ

ここで時代を遡って学生時代のお話を伺いたいのですが、何か熱中したものがありますか。

私は東京の下町で生まれ育ったのですが、学校はテレビ番組の「金八先生」のような感じで、やんちゃな生徒が多かったですね。
大学は早稲田大学に入学して、アナウンス研究会に入りました。

アナウンサーや声優志望だったんですか。

大学受験のときは当時関心があったマスコミ業界に強いということで早稲田を受けました。
今思い返すと小学校の卒業アルバムには「将来の夢 アナウンサー」と書いていたので、どうも長年その方面に関心があったようです。

私事ですが、私も高校のときは放送部に所属してまして、裏方だったのですが発生練習は一緒にやらされてました。「外郎売(ういろう うり)(注)」は、今でも少しなら言えます。

(注)外郎売:歌舞伎の演目のひとつ。その中の一節が、アナウンサーや俳優・声優などの発生練習でよく使われている。

「外郎売」ですか、懐かしいですね。いまでも言えますよ(笑)
発声練習や早口言葉などの練習はよくやりました。

アナウンス研究会といってもやっていることは非常に広く、ニュース原稿を読んだり朗読といったポピュラーなものから、DJや外にインタビュー行ったりと、いろいろやりました。

新卒で入社した化学メーカーで、人事、営業、生産管理から新規事業まで経験

就職活動では、テレビやラジオのアナウンサーの試験を受けたんですか。

ご存知のとおり、アナウンサーはかなりの狭き門です。アナウンス研究会の人でも本気で志望している人は、北海道から沖縄までの全国のテレビ・ラジオ局を飛び回って、どこか一つでも引っかかればいいという就職活動をしています。

私は、何が何でもアナウンサーになりたいとまでは思っておらず、記念受験的に東京のキー局をいくつか受けましたが、案の定あっさり落ちました。
そこまでは想定内でしたので、その後「メーカーで営業をやりたい」と就職活動をしたところ、ご縁があって化学メーカーA社に就職しました。

その会社ではどのようなキャリアを積まれたんですか。

営業志望だったんですが、最初は人事部でした。
想定外の配属に当初は驚きましたが、人事部の中でいろんな仕事を経験できたので、結果的には良かったです。

その後は、営業、生産管理を経て、新規事業立ち上げでメディカルや化粧品の分野もやりました。

いろんな分野の仕事を経験されたんですね。

そうですね。
A社はB to BもB to Cも両方やっているのですが、私は両方携わらせてもらったので、両方の事業特性がわかります。この点は今いるB社でも役に立っています。

“自分は社外で通じるのか?”と15年前に中小企業診断士を志す

岩城さんは中小企業診断士資格もお持ちですが、どんなきっかけで取得されたんですか。

前職A社にいるとき、15年ほど前に中小企業診断士は取得しました。
人事、営業、生産管理とキャリアが変わっていく中で、一度人生の棚卸しのようなことをして社外で通じるのか試してみたいと思ったことがきっかけで、資格取得のための勉強を始めました。

当時は静岡県富士宮市におりましたので、平日は仕事が終わって夜はWEB講義週末は高速バスで東京の資格予備校まで通い、東京の実家に泊まる、という生活でした。

凄い努力ですね。

振り返ると、自分でもよく頑張れたなと思います。
自分で言うのもなんですが、根が真面目なのでやると決めたら一生懸命に取り組む方です。

中小企業診断士としてはどのような活動をされてきたのですか。

企業に所属しながらのいわゆる「企業内診断士」として、無償で中小企業の経営改善などを支援しました。
ただ、昨年の転職活動以降は診断士活動をする余裕がなくなったので、今は活動休止中です。いずれ落ち着いたら活動は再開したいと考えています。

高森さんの話で「社外にいても経営者と一緒に会社を盛り上げていく存在」とCFOのイメージ一変

パートナーCFO養成塾を受講したきっけかは何だったのですか。

中小企業診断士は「理論研修」という座学の研修を一定数受講する義務があるのですが、2021年3月に受けた研修の講師がたまたま高森さんでした。

その研修は新型コロナウイルス感染防止策で、会場に入る受講者の数が制限されていたこともあり、高森さんの話をたっぷり聞くことができました。
それまではCFOは非常に堅い銀行や金融系の方々の世界というイメージだったのですが、高森さんからパートナーCFOについて聞いた時、イメージが大きく変わりました。

どのように変わったのでしょうか。

パートナーCFOというのは、バックヤードにいる縁の下の力持ちの役割だけではなくて、社外の人間であっても経営者と一緒に経営の中心にいて、その会社を盛り上げていく存在ということを教えていただきました。
そういう考え方もあるんだと、本当に目からうろこでした。

当事は前職のA社に在籍中でしたが、ちょうど外の世界も模索してみようと考え始めていた頃だったので、ここで自分への投資をすれば必ずリターンがあると考え、思い切って受講することにしました。

【P-CFO養成塾東京リアルクラスでのグループワークの様子(一番右が岩城さん)】

中小企業診断士歴15年。これまでの経営の学びが、より体系的に一つになった

実際に受講されてみていかがでしたか。

いろいろな学びがありましたが、経営の視点を持つことができたのは良かったです。

会社で仕事をしていると、自分の役割が決まっていますよね。とくに大企業の場合は役割も業務も細分化されているので、その時々の自分の役割に応じた考え方をしていました。
それが養成塾で経営の視点を学んだことで、過去の自分がやってきた仕事、たとえばM&Aを経営の視点で振り返ることができました。
視座を一段上げることができたんだと思います。

中小企業診断士も経営コンサルタントですが、それより深く経営について学ぶことができたということですか。

私の場合いわゆる「企業内診断士」でそれほど本格的に活動できていなかったという事情もありますが、これまで学んできた経営というものが、より体系的に一つのものになった、というイメージです。

各講座の内容の中には知ってるものも当然ありましたし、仕事の一環で経験してきたこともありましたが、それらも含めて企業経営全体の流れやどう構成されているかを、きちんと整理して教えていただきました。
断片的だった知識や経験であっても、きちんと整理されるとこんなにもわかりやすくなるのか、と感心しました。

【養成塾修了後は、P-CFOサロンにもリアルで参加】

B to Cの製品を出したい、ユーザーの顔が直接見える事業を

岩城さんの将来の展望や野望があればお伺いできますか。
まず、現在の会社ではいかがでしょうか。

足元のミッションは、「地球環境に優しい事業の創出」で日々悪戦苦闘しているわけですが、いずれは消費者向けの製品を出したいと思っています。

今勤めるB社のビジネスモデルは、B to Bが中心で、例えばメインプロダクトである包装材料は食品や化粧品などの消費者向け製品メーカーに包装材料を提供しています。そのため、それらのブランドオーナーの考え方は無視できず、当社からは最終ユーザーの顔を見ることができません

他社で例えると「Intel Inside」みたいな状態で、今の「最終ユーザーが見えない状態」を社内でも何とかしたいと思っている連中も多いので、道は険しいですが彼らとも連携しながらB to Cの製品を出したいです。

パートナーCFOとしては、何かやりたいことがありますか。

今はB社での仕事も面白く副業をする間もないですが、サラリーマンで一生終えることはあまり考えていないので、いずれはパートナーCFOとして活動していきたいですね。
具体的な計画はこれからですが、ユーザーの顔が直接見えるような事業をやっていて一緒に経営のことを考えて行けるような方と働けたらいいですね

ストイックな生活が必要でも「ジジイになってもマッチョでいたい」

プライベートでは何かやりたいことなどがありますか。

ジジイになってもマッチョでいたいですね。
テレビなどで70歳、80歳で筋肉バキバキのおじいちゃんが出てきますが、格好いいなと思います。
かなりストイックな生活をしないと彼らのようにはなれませんが、私も普段からジムに通って筋トレをやっています。

【会社の昼休みも週2~3回はジム通い「お酒が好きなので、昼飯はプロテインドリンクのみ。慣れました」】

岩城さんなら、今のマッチョな体型を80歳になっても維持できると思います。ぜひ何歳になってもマッチョなパートナーCFOでいてください。

(編集後記)

15年前は勤務しながら中小企業診断士の資格を取得され、最近ではパートナーCFO養成塾受講や新規事業立ち上げのための転職と、岩城さんの常に新しいことに挑戦し続ける姿勢は素晴らしいと思いました。
また、岩城さんの説明のおかげで、プラスチック製品の特徴がよくわかりました。これからは、ゴミ出しのときの分別はもっと丁寧にやりたいと思います。
地球環境対策はどの企業も喫緊の課題になっています。事業の創出は大変なお仕事だと思いますが、地球のためにぜひ頑張っていただきたいと思います。

<取材・文>第2期生 森本哲哉
取材日:2022年7月23日