2022年1月28日

P-CFO 見上 真生さん

インドを拠点にグローバルな活躍を目指す
P-CFOと教育の2本柱で将来的に独立も視野に

日印スタートアップパートナーCFO
見上 真生(みかみ まさき)さん

今回ご紹介するのは、パートナーCFO養成塾の第4期生(2021年6月~11月)の見上真生さんです。
見上さんはインド在住ながらオンラインでP-CFO養成塾を受講。そのバイタリティの裏には、20年30年先を見据え「業界を超えて通用するビジネスマンでありたい」という強い志がありました。P-CFO養成塾初海外受講生だった見上さんに、養成塾受講前からの複業(社外CFO)やご自身の意識の変化、そしてご自身の経験を踏まえたビジネス教育への思いについてお聞きしました。

【プロフィール】
大学卒業後、国内大手の電気機器メーカーに入社。機械設計や建設現場の設備監督、ゼネコン営業など、現場仕事を経て、管理職として勤める傍ら2015年にグロービス経営大学院MBAを修了。2016年より当社のインドにある子会社へ出向。インドの子会社では工事部の部長を経て取締役として勤務し、経営管理や現地企業との交渉も担当。現在は会社員の傍ら、日本のベンチャー企業支援やビジネス教育にも携わる。
プライベートでは妻のマーケティング会社を起業から支援。娘2人の父親。インド、グルガーオン在住。モットーは「plan for the worst, hope for the best」

(※本インタビューは見上さんがインドから一時帰国された際に、適切な隔離期間を経て実施しました)

「ビジネスマンとして今の会社の外でやっていけるか?」MBAでの自己研鑽と海外出向までの道のり

見上さんは現在インドに駐在されているそうですが、まずは会社員としての仕事について教えていただけますか。

勤務先は電気機器メーカーで、日本にいた頃は機械設計や建設現場の設備監督、ゼネコン営業など、現場仕事を中心にやってきました。当時は会社では評価していただいていて、結果も出していて「俺ってすごいじゃん」と、本当にそう思っていました。

ところが、2012年にグロービスマネジメントスクールでマーケティングのクラスを受講する機会があり、自分がそもそも何も知らなくて、ショックを受けました。井の中の蛙だったなと…。「自分は自社の中ではまあまあ生きていける、でも一歩外に出たら、業界を超えて通用するか?ビジネスマンとして、今のままではだめだ」ということを実感し、それから、グロービスのMBA自費で通うことを決意。「300万円かかるが、頑張る価値はある」と思って入学しました。MBAでは、仕事の相談をできる友人もできましたし、仕事内容も変化がありました。 MBA通学中の2014年にインドの話に希望を出していて、2015年にMBA卒業し、2016年には自社の海外拠点の一つであるインドの子会社へ出向して、今6年目になります。2019年からは取締役として、会社の財務、オペレーション、戦略を中心に担当しています。

インドの子会社の経営陣として、中小企業経営の苦労とお金の大事さを実感

インドの子会社では、2019年に取締役になるまで、そしてなってから、それぞれどんな業務をされてきたのか教えてください。

当初は工事部の部長という立場で、施工管理を担当していました。インド全土の建設現場の予算、スケジュール、安全管理すべてを管理するため、インドの都市部から田舎まで結構行きました。

取締役になってから、経営陣として最初に取り組んだのは売掛金の回収など、お金周りのことでしたが、日本と商慣習が異なるので、売掛金の回収に苦労しました。この経験でお金は経営において一番大事だなと実感しましたし、「小さい会社でネームバリューも資金も人材も限られた状況では本当に苦労するな」ということも、身をもって実感しました。日本の本社は大企業なので、日本で働いていたら絶対気づかなかったことだなと。そういう意味でも本当にいい経験でした。

社外CFOの経験から、高森さんのCFO本に共感

普段はインドにいらっしゃる見上さんが、このP-CFO養成塾を知ったきっかけについて教えてください。

高森さんの本「中小・ベンチャー企業CFOの教科書」がきっかけです。
実は2020年の10月から複業として社外CFOを始めることになり、CFOに関する書籍を2、3冊日本から本を取り寄せたのですが、その中の1冊が高森さんの本でした。
社外CFOをしている中で、「スタートアップや中小企業でフルタイムのCFOは不要(予算や物量的に)だけど、週1での経営サポートなど、低予算のニーズがある」と感じていたところ、高森さんのCFO本を読んで「正にこれだ!」と思いました。著者のプロフィールにグロービスマネジメントスクールとあったので親近感を持ち、思わずFacebookでメッセージを送りました。それから高森さんのセミナー情報のお知らせが来るようにフォローしていていました。

そうした中で、2021年4月に事業再構築補助金セミナーが開催されたので、まずは高森さんと接点を持ちたいと思い受講しました。セミナーを聞いて「高森さんが講師のP-CFO養成塾なら間違いない」と確信を得て、養成塾への申込を決意しました。
実は当時は補助金に関わる予定はなかったのですが、支援先JETRO(ジェトロ)(注1)の日本とインドのDXをテーマにした補助金に申請する機会があり、この時のセミナーの内容もその後しっかり役立ちました。

注1
JETRO(独立行政法人日本貿易振興機構:ジェトロ)
2003年10月、日本貿易振興機構法に基づき、前身の日本貿易振興会を引き継いで設立された、貿易・投資促進と開発途上国研究を通じ、日本の経済・社会の更なる発展に貢献することを目指す団体。70カ所を超える海外事務所ならびに本部(東京)、大阪本部、アジア経済研究所および国内事務所をあわせ約50の国内拠点から成る国内外ネットワークをフルに活用し、対日投資の促進、農林水産物・食品の輸出や中堅・中小企業等の海外展開支援の他、調査や研究を通じ我が国企業活動や通商政策に取り組んでいる。

複業としての社外CFO:インド在住を活かし日本のベンチャー企業を支援

複業としては社外CFOが初めてだったのでしょうか。

実は社外CFOの前にも、インドで「MBA入門講座」という教育事業をしていましたが、新型コロナのパンデミックで対面での講義が一切できなくなり、やめました。
そんな折、インドでマーケティング会社を経営している妻の元に「会社の成長に伴いお金周りが心配。見てもらえる人はいないか」という相談が入ったのです。売上高数千万円の会社だったので「この規模なら自分にもできるかも」と思って引き受けたのが、2020年10月のことです。

支援先はどんな会社で、見上さんは具体的にはどんなことをされているのでしょうか。差し支えなければ教えてください。

今の支援先はある日本のベンチャー企業で、農業関係の事業でインドからも材料を仕入れている会社です。
社外CFOとしての業務は、カネ周り全般です。特に資金繰りを中心にみていて、金融機関向けの資料作成や、定期的に社長と、彼らのビジネスパートナーであるインド人とミーティングをしています。全てオンラインで、クラウドの会計ソフトやウェブミーティングで完結しています。

ミーティングは週1回1時間の予定ですが、実際には1時間半~2時間位が多いですね。資料作成週に1~2時間。今は追加でJETRO関連の業務があり、さらに週に30分~1時間位ですが、十分に土日や平日の夜で収まる量ですね。
時差はあるものの、ミーティングなどの時間は柔軟に対応していただいていて助かっています。また、WhatsApp(ワッツアップ)やSlack(スラック)などのSNSを活用しています。コミュニケーションを取りやすく、お互い忘れないので便利ですね。

養成塾で複業での役割が変化し価格もアップ。新たに芽生えた独立への思い

既に複業で社外CFOをされていましたが、何を期待して養成塾を受講されましたか。また得たものは何でしょうか。

私は会計士などカネ系士業の資格がないことから自信がない部分もありP-CFOとして必要なスキル、マインドなど全てを学びたくて参加しました。
養成塾で得たのは知識、そしてパートナーCFO仲間とのネットワークですね。講義で配布される資料も本当に素晴らしく、あれだけで数十万円の価値があると思います。
そして何より、自信がつきました。企業の経営に関わる以上、カネ周りの最低限の知識等はもちろん必要だと思いますが、それでも、私のように士業の資格がなくても、中小企業のサポートは十分に可能だとわかりました。
半年間の受講で見える世界が変わり、次の一歩へ進む背中を押してくれたと言っても過言ではないと思います。

【BIRTH KANDAにて。見上さんの帰国期間中、高森代表から直接修了証をお渡しできました】

社外CFOとしての仕事内容に変化はありましたか。

社外CFOを始めた当時は、自分が持っていたMBAに関する知識やスキルインドの子会社でやってきた経験を基に、とにかく中小企業の社長の困りごとを引き出して対応することが中心でした。
元々はお金に関する相談から入りましたが、今では「将来どうしていこうか」といった全体戦略やマーケティング分析、採用に関する相談にも応じるなど、養成塾で学んだことを活かしてアドバイスできるようになりました。まさに経営全体のサポートをする、経営者のパートナー的な立ち位置になりましたね。

提供できる価値が広がっているのですね。報酬も上がったとお聞きしましたが、業務量の変化はいかがですか。社外CFO/パートナーCFOとしての支援先を増やす余地はありそうでしょうか。

はい。2020年10月に契約して、1年は月4回ミーティングで定額での契約でやってきました。今回更新する際、回数は変わらず月額5万円アップして頂きました。
面談以外の業務時間は減ってきているので、きっかけがあればクライアントを増やしていきたいですね。

実は、パートナーCFO養成塾に来る前の2021年の6月までは「複業でやっていこう」と思っていたのですが、養成塾が進むにつれて「これはビジネスチャンスがあり、お客さんとの接点、そのファーストコンタクトさえ取れれば、もしかしたら独立してやっていけるのでは」と思うようになりました。

【インドのスタートアップと、今後に向けたキックオフミーティング】

独立への思い「今後のキャリアを考えて、43歳の今チャレンジしたい。家族の時間にもコミットしたい」

養成塾で複業から将来的に独立へと思いが変化したのですね。

今は1社ですが、2社3社と増えてきたら独立も考えていて、自分の中では一応タイムリミットも決めています。

もし独立するとしたら生活も変わりそうですね。

そうですね。私には6歳と4歳の娘が二人いますが、実は子どもとの時間にもっとコミットしたく「今、週5勤務で稼ぐ金額を週3日で稼げれば、家族との時間が2日間増やせる」というのが独立を考えた一番の発端です。
新型コロナのパンデミックで在宅勤務が増え、娘たちと過ごす時間がとても貴重だと思うようになりました。というのも、学校がオンラインになり教育環境が不安定な状況であっても、親がしっかりコミットすることで子どもたちは遊びでもスポーツでも勉強でもできるようになるんです。ただ、もっと子供たちにコミットしていきたいと考えると、月曜日から金曜日まで会社勤めでは、やはり厳しい。

サラリーマンでは週3日という働き方はできないし、「何か自分の能力を活かして、自分にしかできないことをやりたい」と思っていたところ、社外CFOとして機会があり、「これなら自分が思う働き方ができるかもしれない」と思っています。
それに、今後20年30年と一つの会社でしか働いた経験がないと、いざというときに何もできなくなるのでは、という思いもあります。今40代前半であり、50代後半でチャレンジするよりも早い方が楽だし、何かあっても取返しもできると考えています。 なにより、「これ(パートナーCFO)なら、自分はできる」という、根拠のない自信があります。

【何より大事にされている、家族との時間】

将来的に独立後はパートナーCFOと教育を2本の柱に、インドを拠点にアジアで活躍したい

将来的に独立されるにあたって、ぜひ今後の目標を教えてください。3年後10年後ではいかがでしょうか。

独立して3年目年商2,000万円、というのが目標です。パートナーCFO業務が大きな柱ですが、もう一つ、若者やワーキングマザーなどをサポートする教育関連の事業も始める予定です。その2つの柱を合わせて2,000万円を達成したいですね。割合で言うとパートナーCFOが6.5、教育関係が3.5というイメージですね

10年後も、その2本の柱のイメージは変わらず、インドを拠点にアジアでビジネスをしているイメージです。顧客は日系と外資(インドやタイ)が5対5ですね。ビジネスの拠点としてシンガポールも憧れますが、実際にはインドにいそうな気がしています。

ビジネス教育を通して、あらゆる人にフェアな社会を作っていきたい

教育関連の事業について、具体的にどんな内容でしょうか。

MBAで学ぶビジネスの知識をベースにしたものです。
私はMBAで学ぶ内容は全てのビジネスのベースだと思っています。ただ、MBAのために大学院に行くとなると3~400万円とかかるので、決して簡単に出せる金額ではありません。
そこで、若いビジネスパーソンやワーキングマザー、学生など「ビジネスへの意欲や気持ちはあるけれどよく知らない。お金はあまりかけられないが、そういうことを学んでみたい層」に対してやっていきたいです。

私は、そうした仕事を通して、世の中、特に日本を多様性がある社会にしていきたいと考えています。企業であれば、中小企業やスタートアップ社会からの評価やプレゼンスがもっと高まったり働き手として、女性や若者、外国人もフェアに仕事をしながら生きていく、そんな社会になったら良いなと思っています。

その思いの背景を、ぜひ聞かせてください。

私自身二人の娘を持つ親だということももちろんあるのですが、自分の妻の起業を支援したことも関係しています。

妻は日本ではバリバリ働いていたのですが、インドへ来てから二人目を授かり駐在妻として生活していました。そんな中で「働きたいけど雇ってもらえない。働けない」という壁にぶつかり、とても辛そうな時期がありました。色々模索する中で妻が「起業したい!」と言うので「それ面白いね!」と私も手を尽くしてサポートをし、2019年STORY TELLINGというマーケティング会社を設立しました。

起業してから輝きだした妻の姿を見て、「妻のように意欲があるのに、行動できない人ってたくさんいるのでは」と考えました。それは男性の理解やサポートの問題というより、社会風土やカルチャーによるものが原因として大きいのではと考えています。 だから、そういうのを変えていきたい、サポートしたいと思うようになりました。娘たちが大きくなった時に、ジェンダーギャップに困ったりしないような世界になったら良いなと思っています。

【MBA入門講座での講師を務める見上さん。熱く受講生へ語りかけます】

パートナーCFO/講師/父親として、高森さんがロールモデル

ちなみにロールモデルや、こうなりたいというイメージはありますか。

これは、お世辞抜きで高森さんです。パートナーCFO®のように「自分の価値を時間ではなく結果や価値で感じて貰える」働き方はいいなと思います。
というのも、過去の自分を振り返ると、例えば管理職になる前、長時間働いて残業代が2~30万円だと喜んでいたこともあったのですが、それは決して生産性がいいとは言えないですよね。パートナーCFOであれば、たとえば1時間で30万円の仕事をして、それでお客さんが「超ハッピーだ!」と言ってくれたら、相手も嬉しいし、こちらも嬉しい。そういう価値を出していきたいですね。

高森さんはそういう働き方をされていても「すごいだろ」という雰囲気もないし、ご自身の経験と知識を体系化して講座として教えてくれています。自分も講師をしているので目指す姿です。それに、息子さんと多くの時間を過ごしていらっしゃる様子なので、そういう姿も同じ父親としていいなと思います。

【平日は長女さんのオンライン授業中を見守りつつ、在宅勤務に励みます】

スタートアップを支援したい人はもちろん、スタートアップの中のCFOも知っておくべき

パートナーCFO養成塾を終えてみて、どんな方におすすめだと思いますか。

中小企業やスタートアップのお金に関わる全ての人、ですね。
僕は、MBAはビジネスマン全てにマストだと思っていますが、パートナーCFOの内容は、中小企業やスタートアップに関するお金を扱う人には特にマストだと思います。ゆくゆく独立をしたいと考えている人や、スタートアップを支援したい人はもちろん、スタートアップの中のCFOをやる人も知っておくべき話かなと思います。

日本P-CFO協会では分科会やnoteにも挑戦したい

これからはパートナーCFOのメンバーとして、ぜひ今後の活動に日本P-CFO協会も活用していってください。

はい、毎月のサロンヒト組織に関する分科会にも興味がありますし、noteでの発信にもトライしていきたいです。特に発信に関しては、これまで書く機会は少なかったので、おそらくはじめは苦労すると思います。しかし、それは筋トレ後の筋肉痛のようなもので、コミットしてやり遂げていくことで自分に力がついていくのだと思っています。その過程で得るであろう「見上さん、ありがとう。よかったよ!」や「ここはこうしてみては?」といった反応も含めて、自分にとってプラスでしかないと思っています。

受講前よりはP-CFOとして自信がつきましたが、まだまださらに深く広く学ぶ部分がたくさんあります。他のP-CFOメンバが持つ自分には無いモノや、チャレンジを通して新しいことを吸収し、レベルアップを続けていきたいと思います。

(編集後記)
今回、見上さんはP-CFO養成塾をインドから受講!ということで、そのバイタリティに興味深々でインタビューに臨みました。
社外CFOとしての支援内容に学んだことを早速取り入れていたり、ビジネス教育への熱い思いを持って活動されていたり、パートナーCFOらしい「堅実さ」に加え、「エネルギッシュさ」と「行動力」を兼ね備えた方でした。
複業から将来的に独立へ、見上さんのこれからのご活躍を心より応援しています!

<取材・文>第2期生 溝上愛
取材日:2021年11月27日