2022年12月11日

P-CFO 田中 圭一郎さん

上場企業の経営管理やIPO実務経験を活かし、ベンチャー企業のバックオフィスを一手に担う、頼れる存在

株式会社コネクティ執行役員経営サポート室長
田中 圭一郎(たなか けいいちろう)さん

今回ご紹介するのは、パートナーCFO養成塾第4期生(2021年6月~11月)田中圭一郎さんです。

田中さんは、これまで業界の異なる複数の会社経営管理・経営企画業務に携わり、IPO実務も2回経験してきました。直近ではパートナーCFO養成塾を経て、上場企業の子会社であるベンチャー企業転職。現在は、執行役員経営サポート室長としてバックオフィスを一手に担われています。
そんなベンチャー企業のバックオフィス経験が豊富な田中さんから、ベンチャーCFOとしての道のり養成塾を受講した背景日本パートナーCFO協会のコミュニティをどのように活用されているかまで、お話を伺いました。

【プロフィール】
秋田県出身。大学卒業後、新潟県の建設会社でキャリアをスタート。上場企業でIRを含めた経理業務を経験し、東京都内のベンチャー企業に転じる。2社のベンチャー企業において、IPOの現場責任者として2度のマザーズ上場を達成。その後、別のベンチャー企業の経営管理・経営企画を経て2022年1月に株式会社コネクティに参画。2022年6月からは執行役員となり、経営サポート室長として経営管理と経営企画など管理系全般を管掌。
趣味はサウナ通い。仕事で煮詰まった時など週2、3回は、お気に入りのサウナでリフレッシュしている。

株式会社コネクティ https://www.connecty.co.jp/
2005年設立。【クラウドプラットフォームとデジタルコミュニケーション支援総合事業】として、CMS(※)製品のサービス提供、サイトデザイン・UX設計・開発、メディアサービス運営などを行う。
※CMS:コンテンツ・マネジメント・システムの略称。ウェブサイトの構築・管理・運用を行うための管理システムのこと

養成塾を経て、上場企業子会社のベンチャー企業で執行役員として新たな挑戦

田中さんは養成塾修了後に転職されたそうですが、今現在はどのような仕事をされているのでしょうか。

株式会社コネクティという会社へ転職し、今は執行役員経営サポート室長として経営管理、経営企画、管理系全般の仕事をしています。今の肩書になったのは、この6月末からですが、具体的な業務内容はそれまでとなんら変わりないですね。
コネクティは東証一部上場会社の株式会社WOW WORLD GROUP の子会社です。元々親会社がゼロから作った会社ではなく、独立していた会社が2年前にグループ入りした形で、10月にグループの再編がされたところです。

田中さんとコネクティとの出会いや、入社を決めたきっかけを教えて下さい。

パートナーCFO養成塾を終えて、当時所属していた会社の仕事で「パートナーCFO」の学びを活かしていくという選択肢もありました。ですが、その会社はどちらかというとスタートアップに近く、どうしても自分がプレイヤーもやらないといけなくて。プレイヤーをやる時間が多いこと自体は悪いことではないと思いますが、ただ、自分の成長を考えたときに、もっとマネジメントの方もやりたいと思うところがありました。

スタートアップの会社でやれることはやったので、次は中堅ベンチャーの方でマネジメントの仕事もやっていきたいと考えていたところ、2021年の末にコネクティの代表である服部さんと知り合いました。
「ちょうど管理系の責任者が不在」ということで、自分のやりたいことと合致して、転職することが決まった感じですね。

現在のコネクティの社員数はどのくらいですか。

今70名弱です。コネクティはある時期にガッと急成長し、そこで一気に社員が増えたものの、管理業務が手薄になってしまっており、今後は管理業務を強化したいという、代表の意向もありましたので、私が入社しました。

成長している過程で噴出した諸課題の解決が、まずはミッションということですね。

まさに「30人の壁を超えたがための問題が色々ある」という状況ですね。今も継続して取り組んでいます。

養成塾で俯瞰した見方を会得。管理系業務に横断的に関わることが、仕事のやりがい

マネジメントをしたいと転職されたとのことですが、実際の業務内容もそちらに注力出来ていらっしゃいますか。

はい。ただ、そこは走りながらやっている感じなので、なかなか思うようにできない部分もありますが。

今の仕事で、一番やりがいを感じるのはどんなところでしょうか。

ベンチャーとしては社歴が長い会社ですが、管理系に関しては改善の余地はいろいろあります。そこを交通整理しながら、取り組んでいます
管理系の業務って、人事や総務、経理、経営企画と横に密接につながっていると思いますが、そういうところを横断的に見て関わりながら仕事ができることは、やりがいを感じています。これは、パートナーCFO養成塾で、そういう俯瞰したものの見方を知り、その実践が出来るようになったことも大きいです。

養成塾での学びを活かせる環境ということですね!そんなコネクティの経営体制について教えて下さい。

経営としては取締役3名(代表と非常勤2名)、執行役員3名人体制ですね。代表は、ホームページにメッセージを出している服部恭之、執行役員は、私のほか、CTOともう一人事業責任者が執行役員を務めています。養成塾で出てきた経営の役割分担で言うと、COOとCTOが分かれた四角形になるイメージです。(2022年7月取材当時)※

社長やCOOとの距離感などで悩むことはありませんか。

距離感に関して言うと、悩んでいられないですね(笑)
私がやるしかないので、聞きたいことは聞くし、質問された時にはちゃんと関与するし、という感じでやっています。
逆に、経営レイヤーによってあまり壁を作らないでやっているような感じですね。

経営管理・経営企画という答えのない仕事だからこそ、自分で仮説検証のPDCAを素早く

田中さんの今の業務についてもう少し詳しく教えて下さい。経営サポート室には何名いらっしゃるのでしょうか。

経営サポート室としては、経理1名、人事1名、総務1名、私の4名体制でやっています。経営企画の役割は、私が担っています

経営サポート室長として仕事をする上で、心がけていることや意識されているのはどんなことでしょうか。

経営管理・経営企画の業務は、必ずしも答えがあるわけではないので、自分である程度仮説を作って、それを立証していくこと日々多くあります。
業務を行う上では、いろんな条件や制約がある中で、最も会社としてベストな選択肢は何か、ということを常に考えるように、ということを心がけています。

なるほど、それは同時に、今の仕事で一番苦労されている点でもありそうですね。

そうですね。やはりこの経営企画業務に関しては自分がトップでやっているので、自分で答えを出さないといけない。そこが一番やりがいある部分でもあるし、苦しさを感じるところかもしれません。

日々悩みながら、走りながら、ということですね。

そうですね。難しいのは、理論上正しいことと、会社的に正しいことが必ずしも一致しない時もあることですね。(理論上で)言っていることはわかるけど、それを実行するとめちゃくちゃ負荷がかかっちゃうよね、ということもやっぱりあるので、そこの折り合いをつけないといけない。
正しいことと、実際にできるところ、そこでいかに折り合いをつけるか、という感じですね。

とすると、仕事では考える時間も結構長かったりするのでしょうか。

考えている時間はもったいないので、ある程度早めに答えを出すようにはしています。悩むというよりは、日々何かあれば相談して、自分の仮説が正しいかどうか確認している感じですね。

【入社後、キックオフミーティングで部署を代表して次期の目標や新たな施策・取り組みを発表する田中さん】

運用するのは現場だから、「予算策定は現場に伝え、理解してもらうまで」が仕事

伺った内容から、経営サポート室としての仕事は、事業部門とも関わりながら進めていることが多いのでしょうか。

そうですね。事業側と一緒にやっています。
養成塾の講義でもありましたが、予算を作るのは我々ですが、それを運用していくのは現場なので、「現場に伝え、理解してもらうこと」も仕事の一部です。それから仕組みづくりもです。予算を作って終わりではなく、それをモニタリングできるような仕組みづくりをしなくてはいけないので、現場サイドと協力しながら行っています。

予実管理やKPIの設定も田中さんがされるのでしょうか。

そこも事業側とディスカッションしながら、ですね。なので、現場のトップと一緒にディスカッションすることはわりと多いですね。

事業側と言われましたが、中はいくつかの部門やプロジェクトで分かれているのでしょうか。

うちの会社の場合、事業側は統括責任者がいて、その方とディスカッションすることが多いです。事業としては一つで、内部はざっくり分けるといわゆるサービスを作るプロダクト部門と、いわゆる受託で制作をする部門の2つがある、という感じですね。

統括責任者の方とのディスカッションで白熱する場面もあったりするのでしょうか。

そんなに激しいディスカッションをすることはなくて、割と穏やかかなと思います。「とりあえずやってみようか」というところが、性格的に自分と似ているところがあって、意見がぶつかることはなく「一緒にやっている」という感じです。
完全に決めてやるというより、ある程度8割ぐらいルールを作ったら、あとは運用してみて、足りなかったら直していこう、という感じでやっています。

ちなみに養成塾を受講されるときには、副業も検討されていたかと思いますが、転職されてからはいかがですか。

転職前は、本業をやりつつ副業で2、3社出来たら…と考えていましたが、今は状況が変わりました。今の会社では社内でパートナーCFOとしての実践が出来ているので、今はあまり考えていないかな、という感じです。

ベンチャーの経営管理・経営企画として、「本業でパートナーCFO実践中」ということですね

ベンチャー企業で2回IPO業務を経験。経営管理・経営企画の豊富な実践を積んで、今がある

そもそも、田中さんが経営管理や経営企画の仕事をするようになったきっかけは何でしょうか。キャリアの変遷を教えていただけますか。

私は秋田県生まれで、新潟の大学に行きました。新潟のゼネコンの会社に新卒入社したところ経理部の配属になりました。大学では政治史を専攻していたので、入社後に経理の勉強をしました。
その会社には10年弱務めましたが、当時ジャスダック上場していたので、最後の3年位は本部の経理部でいわゆるIRなども担当しました。そこで上場会社の経理スキルは結構身につけられました。
ただ、結構安定した会社であったこともあり、毎年会議所類や決算の書類を作成しても、毎年数字が変わるだけ、かつ、会社はそこそこ大きかったので、どうしても開示書類を作るなどのパートごとで業務範囲が狭かったんです。せっかく身につけた経理のスキルをもっと活かしたいと考えて、ベンチャーに転職し、東京に出てきました。

最後の3年で上場会社の経理の仕事はやり尽くしたな、という感じだったのでしょうか。ちなみに、ベンチャー企業への転職後はどのような仕事をされてきたのですか。

転職した先は雑貨を扱う会社で、今はもう上場していますが、当時IPOを目指している会社でした。その管理部門に入り、そこでIPO業務を身に付けたという感じですね。
ただ、IPOの責任者は自分以外にいてスタッフとしての業務だったので、「次にやるなら、スタッフではなく主体でやりたい、やるならIT系の会社がいいな」と考えていました。
当時はまだクラウドなどが今ほどメジャーではなかったので、次に伸びるのではと考え、クラウド系の会社でIPO準備中の会社を探しまくって、会社を紹介してもらい入社しました。そこで2回目のIPOを経験しました。

2社目のベンチャー企業での経験を経て、確実にIPOを経験できるように、慎重に3社目の会社を選ばれたのですね。3社目ではIPOに関しては期待していた経験はできましたか。

そうですね。管理部長は別にいましたが、実質私がIPOの対応をやってきましたIPO業務を2回経験し、その後はITのスタートアップに転職し、管理部門や経営企画の責任者を3年位していました。これがコネクティの直前の会社ですね。

今ではベンチャー企業での勤務歴の方が長くなっているようですが、ベンチャーならではの仕事のやりがいや面白さをぜひ教えて下さい。

性分的に、決まったことを決まった通りにやるよりも、自分で考えながらやる方が好きだったりするので、ベンチャーの方が性に合っているのかなという気がしています。もちろん、その分自分で頭を使わないといけないし、手も動かさないといけないので、大変なところはあります。でも、仕事のやりがいと大変さはトレードオフかなと。

我流のIPO業務の知識・経験の棚卸しのためにパートナーCFO養成塾へ

一番直近の転職の前に、パートナーCFO養成塾に参加されていますが、そのきっかけや当時の目的などを改めて教えていただけますか。

高森さんとは、コネクティの前の会社に勤務していた時、ある会合で知り合ったのですが、当時の経営企画の同僚が高森さんと前職で一緒だったり、他にも共通の知人が何人かいたことが分かり、Facebookでつながっていました。そのなかで、パートナーCFOのセミナーをされることを知りました。
私は確かに転職してからずっとIPO業務などをやってきたのですが、我流だったりするので、知識や経験の棚卸しや整理が出来そうかなと思い、オープンセミナーに参加してみることにしました。セミナーでの話を聞いてみて、半年間の養成塾にも参加することを決めました。

受講前は知識や経験の棚卸しなどを目的とされていたとのことですが、実際に養成を受講されてみていかがでしたか。

先にも述べましたが、やはり管理系の業務はそれぞれつながっているなと、俯瞰して見ることができるようになったのは変化したところかなと思います。

振り返ってみたら、一通りご自身は経験されてきていたなという感じでしょうか。

そうですね。実務としてやってきてはいたけども、我流だと思っていたところがあったのが、ちゃんと知識として言語化できたり、体系立てて理解できたのは良かったです。

これまでお話を伺ってきて、田中さんがこれまでに取り組まれてきた仕事はパートナーCFOのコンセプトや業務内容とマッチする印象を受けました。フォーマットなどもご活用いただいていらっしゃいますか。

そうですね。今は社内ですでに使っている書式があるので、フォーマットなどをそのまま使う機会はまだないのですが、参考にさせてもらっています。

【養成塾でのワークでは、メンバーと積極的に意見を交わしました】

P-CFO仲間のコミュニティは「ベンチャー企業の仕事で困ったら誰か助けてくれる」心強いネットワーク

ここまでお話を伺ってきて、田中さんが養成塾で学んだことを活かして実感されている様子が伝わってきました。田中さんは、日本パートナーCFO協会のコミュニティの方もご活用いただいていますよね。

はい、活用させて頂いています困っていることを出すと、誰かしら助けてくれるのでとても有難いです。
コミュニティ内で何度か「こういう人探しています」と相談しましたが、産業医さんや会計士・税理士さんなど実際に紹介してもらったりと、メンバーの皆さんに助けてもらいました。
P-CFOメンバーの中には実際にベンチャー企業で働いている方もいるので、ベンチャー企業に合う専門家などをご紹介頂けて非常に心強いですね。

それは良かったです。協会は各メンバーの経験やつながりをシェアする場でもある、ということが伝わるエピソードですね。

【2021年養成塾最終日の一枚】

パートナーCFOがもっとメジャーな存在になり、裾野が広がることに期待

田中さんはすでにメンバーのコミュニティを活かしていらっしゃいますが、日本パートナーCFO協会に今後期待することはありますか。

これまで数社経験し、周りの人の話も聞いてきましたが、「管理系の業務って良くわからない」という経営者も案外いるなと感じています。
会社の会計や経理の業務は体系だっているようで、そうでないことも多いので、今後会員数が増えて「パートナーCFO」がメジャーな存在になって、裾野が広がっていくといいなと思います。そして、管理系業務が経営者側にもよくわかる状態になっていくといいですね。

田中さんの今後の目標を教えて下さい。

まずは経営管理・経営企画を担う者として、今いるコネクティを整えていくことが目標ですね。 今までもそうでしたが、今いる場所での目標を達成したら、自然と次の目標が出来るかなと思います。

(編集後記)
田中さんのお話を伺って、常にご自身のいる場でベストを尽くし、確実に成果を上げる一方で、自分のやるべきことを終えたら「次に自分がどこへ行きたいか」を明確にして、次へ進む決断力と潔さを感じました。
IPO業務、経営管理、経営企画と、ベンチャー企業のCFOとして求められる知識も経験もお持ちの田中さんの、これからの展開がますます楽しみです!
これからもご相談や成果報告に、ぜひ協会コミュニティをご活用していってください。

取材・文:第2期生 溝上愛
取材日:2022年7月27日