2023年3月1日

P-CFO 清水 謙伍さん【後編】

東京と香川の2拠点で活動中。
養成塾をフル活用し、地方の中小企業を財務面からアップグレード!【後編】

清水ビジネスパートナー株式会社 代表
清水 謙伍(しみず けんご)さん

今回ご紹介するのは、パートナーCFO養成塾の第4期生(2021年6月~11月)の清水謙伍さんです。
清水さんは香川の建設機械メーカー勤務時代、20代で中小企業診断士試験に合格。その後東京のコンサルファーム勤務、数か月の副業期間を経て、2021年2月に独立起業されました。独立後すぐに法人化されるほど順調に事業を伸ばす中、パートナーCFO養成塾のフルサポートコースを受講されました。
清水さんからは、「東京・香川での2拠点活動」と「P-CFO養成塾のフルサポート受講」の2つのトピックについて、詳しくお話をお伺いしました。
今回は後編「P-CFO養成塾のフルサポート受講がテーマです。「フルサポート」についてさらに深堀するとともに、「地方の中小企業財務部長代行」としての清水さんの描く未来についてお届けしていきます。

【プロフィール】
香川県高松市生まれ。
東京理科大学理工学部卒業後、香川県の建設機械メーカーに入社。生産管理業務に従事する。
2014年に中小企業診断士資格を取得。2017年より東京のコンサルティングファームで事業再生や資金調達などのコンサルティング実務の経験を積み、2021年2月に独立。
現在は東京と香川を拠点に「地方の中小企業の財務部長代行」として、経営者のお金と事業に関する困りごとを解決することで、経営者が社長業に注力できる経営環境づくりを支援。あらゆるステークホルダーから高評価を得られる地域ナンバー1企業の創生に心血を注いでいる。

清水ビジネスパートナー株式会社 https://shimizubp.com/

3.フルサポート受講生として(1・2年目での違い)

毎月の忙しいからこそ、フルサポートで経営を振り返る時間を作る

フルサポートでの受講は2年継続されていますが、どのように活かされていますか。

毎月のグルコン高森先生との1on1は、自分のPDCAを回すための環境として使っています。パートナーCFOのフルサポートでは、毎月グルコンの機会があります。グルコンでは毎月、1か月の振り返りと、次のアクションを書き出した報告書を共有していて、常に自分の業績管理や予実の管理、アクションプランのチェックが出来るように今の売上や顧客数も含めて赤裸々に生々しいデータを共有しています。
文章化して書くだけでも自分の中で振り返りができ、「次にこれをしないと」と次のアクションにつながっています。
やはり補助金業務のボリュームが多いので、こういう定期的に振り返るような環境づくりをしないと、3年後、5年後を見据えてビジネスモデルを作ることもできないなと思いフルサポートを継続しています。

忙しいからこそ、経営について考える時間や、自分のパフォーマンスが出せる環境づくりに注力されているのですね。

私はもともと環境の影響を受ける方なんです。独立準備で転職した際にも、その会社のマインドに染まってしまいそうでしたし、独立を決めた2015年からある診断士の先生に定期的にコーチングを受けていて、おかげで自分の軸がぶれることなく独立できました。
自分一人で考えると流されてしまうので、私の場合は中長期的に『こうなりたい』と目指すものがあるとき「自分がなりたい、行きたいという方向で一歩先を行く人に定期的に面談してもらい、PDCAをしっかり回す」ことは自分に必要だと実感しています。

P-CFOのフルサポート以外でも、自分のPDCAをしっかり回していけそうな人と会う機会や環境づくりにはお金をかけています。例えば最近は、営業・マーケティング専門のコンサルタントや、人事コンサルをしている社労士の人など、各専門分野の方との時間も持つようにしています。もちろん、知識を得るためであれば本を読めばいいのですが、今一つリアリティもないし、具体的に「こういう時にどうしたらいいか」というケースはわからないものです。今は『自分がコンサルを受けることで、得た知識をお客さんへのアドバイスにも生かしていきたい』と考えています。そういうふうに、常に相談出来る人がいる環境を作っています。

清水さんの場合はすでに自社の顧客は十分な数がいらっしゃったと思いますが、フルサポートでのP-CFO案件は具体的にどう違うのでしょうか。

私の場合は、ベンチャー企業のCFOのサポート業務を経験できたので、自力では開拓できない顧客の仕事を経験出来ています。また、高森さんに相談できる環境で仕事が出来る、という点も違いますね。

フルサポートの1年目と2年目で、特に変化したことや思いはありますか。

1年目は自分のコンサル商品づくりもそうですが、事業の拡大や組織化を考える中でぶつかる壁について、高森さんや他の受講生にリアルタイムで相談しながら進めることができました。経営者の方もメンバーにいたので、様々な体験談を聞けるのはありがたかったです。ここで、『○○さんだったらどう考えるか、行動するか』を吸収することもできました。

2年目5期生が加わり自分がコメントをする機会も増えました。独立したばっかりとか、独立しようとしてる人たちに共通する課題も、少しは勘所を持っているので、自分の経験も踏まえつつコメントしますが、これは結構勉強になります。『あ、これは響いたかも?とか、これは刺さらなかったな』とか。(笑)
あとは、グルコンに参加している他のメンバーとはお互いの発表やコメントを通して各々の専門性やビジネスに対するスタンスだけではなく、人柄もわかるので信頼関係が出来て、実際に仕事をお願いすることもあります。

P-CFO養成塾・フルサポートと受講されてきて、学びや得たことで、特に良かったことは何でしょうか。

養成塾のフレームワークやツールももちろん参考にしていますが、一番はベンチャーのCFOのアシスタントを経験できたことですね。自分だけではそういう仕事をする機会はなかったと思うので。
その仕事を通じてベンチャー企業の実態を知ることが出来ましたし、自分のスキルやノウハウで足りていないことが明確になりました。『これを身につけていけば価値提供できるな』という方向性も決まりました。そういうことが分かったことは養成塾に入ってよかったなと思います。

【養成塾最終日は「Day7以降の自分との約束」と「P-CFO宣言」を発表】

P-CFOサロンで新しい知見をインストール

P-CFOサロンにも、これまで何度かご参加いただきました。

サロンでは、大塚久美子さんやスモールM&Aの斉藤さん、東京プロマーケットの回など参加させて頂いています。
私自身は補助金やデットファイナンス、地方の経営者向けの顧問の仕事を中心にしているので、P-CFOサロンではベンチャー企業やIPOに関することスモールM&A等はふだんなかなか触れることがない情報を得ることが出来て、すごく助かっています。特にスモールM&Aなどは毎年動向が変わると思うので、毎年あってもいいなと思うテーマの一つですね。

4.今、注力していること。今後の目指す姿。

『地方の中小企業財務部長代行』に込めた思い

清水さんのHPに「地方の中小企業の財務部長代行」とあります。清水さんならではの肩書だなと思いますが、この言葉に込めた思いを聞かせてください。

肩書は試行錯誤中ではありますが、パートナーCFOやCFOという言葉は、どうしても地方にある中小企業ではなじみの薄い言葉です。
私は地方の中小企業の中でも製造業の経営者にアプローチしたいと考えていて、かつ、自分の強みを生かして財務周りで役に立ちたいと考えています。そこで、自分の役割がイメージしやすい『財務部長代行』という表現を考えました。少しでも身近な存在に感じてもらいたいという想いを込めています。実務上は、自分の仕事内容に関して『経理と財務の違い』や『税理士さんとの役割の違い』が説明しやすい、という点もあります。

製造業を支援したいというのは、どんな背景からでしょうか。

これまで補助金申請支援の仕事をたくさんしてきましたが、中でも製造業の経営者の方が多くて、財務系に苦手意識を持つ経営者が多いことを知りました。
一方、私自身について考えると、コンサル会社の経験からも特に財務周りに強みがあります。また今後は補助金以外の事業の割合を増やし、補助金以外の事業だけで3,000から5,000万円の売上を安定して出せるようなビジネスモデルにしていきたいと、資金調達支援やコンサルメニューを充実させるべく、前職との親和性が高く、知識やノウハウもある『財務周り』でやっていこうと考えていました。
そんな風に考えて、お客さんの困りごと・ニーズがあり、自分の強みを活かせる製造業は『自分がお役に立てる度合いは大きいのかな』と考えています。ちなみにHP意外と公的機関の方も見ていてくださるので、大きい名刺という認識で使っていますね。

アフターコロナは環境変化に応じたサービスを強化。補助金支援以外の事業で回る会社に

今後注力して取り組んでいく事業について教えてください。

昨今の物価高騰に、今後はコロナ融資の返済時期を迎えるなど、中小企業を取り巻く環境は、アフターコロナで確実に変化してきています。今後はその変化に応じた支援を充実させることに注力していきたいです。
具体的には、資本性劣後ローン※1などの制度融資を活用した資金調達やコロナ禍でのゼロゼロ融資※2の借り換えで必要な経営改善支援計画の策定など、「405(ヨンマルゴ)事業※3」に関する事業者支援です。

また、自社の顧問的なサービスとして『財務部長代行』『トップコーチング』にも注力していきたいです。前者では予実管理や経営計画の策定・推進の支援、設備投資の評価・分析、金融機関向けの資料作成や面談同席、社内の幹部や外部の専門家など、社内外のコミュニケーションも担います。後者は経営者との経営者のゴールセッティングから理念・ビジョンをベースにした意思決定の支援や、具体的な事業計画作成の支援などを行います。

※1資本的な性格を持った劣後ローンのことで、借入をしても自己資本と見なされるもの。
※2新型コロナウイルス禍で売り上げが減った企業に実質無利子・無担保で融資する仕組み。
※3金融支援を伴う本格的な経営改善の取り組みが必要な中小企業・小規模事業者のための経営改善計画。

今主力となっている補助金は、もともとフロント商品だと考えていたのですが、この補助金支援によって現在では200社ほどの顧客リストができました。補助金申請支援は継続しつつも、中長期的に事業者を支援得出来るサービス展開を進めていきたいです。

来期は売上の中身にもっとこだわりたい

冒頭で「独立当初に立てた独立3年での目標・年商3000万円はすでに達成されてきたとのことでしたが、次なる目標は何でしょうか。

独立当初に立てた目標は、3年後に年商3,000万円、内訳としては補助金と補助金以外の仕事で3対7の比率、というものでした。コロナ禍での独立だったので、特にコロナ関連の補助金の仕事は3年目くらいから減ると想定したからです。

そもそも、補助金に関してさかのぼって見ると、コロナ以前は「ものづくり補助金」1000億円の予算だったものが、コロナで補正予算がついて、事業再構築補助1兆1000億円が始まり、ものづくり補助金系(ものづくり・IT・持続化補助金)は3000億円、今年は7000億円となりました。補正予算額が最近決まりましたが、事業再構築補助金で5800億円、ものづくり補助金系で2000億円と、来年も補助金制度は続きます。
中小企業を取り巻く大型の補助金の総額としてはコロナ禍をピークに減少しているものの、自社の補助金の受注数はむしろ増えています。なおかつ、下請け仕事は一切なく、直請けになり、銀行や税理士さんからの紹介なので財務面はしっかりしている会社が増えました。
財務面が整っている事業者であれば、補助金支援で必要な情報の準備がスムーズですし、さらなる投資のための資金調達や財務部長代行などの中長期的なサービスも提案するチャンスが増えるかなと考えています。

補助金に関しては今のところ積極的に営業していませんが、すでに来期も2,000万円くらいに達しそうな見込みです。来期は売上を伸ばすことはもちろんですが、内容にもこだわっていきたいです。
例えば補助金に関して、今は、半分は業務委託ですが、半分は自分が手を動かしています。来期自分が担当するのは2割程度にして、8割は外部に任せられる体制にしていきたいですね。

【香川県でのセミナー風景】

経営者の壁打ち、PDCA回しで起業のさらなる成長を支援。トップコーチングに込めた思い

補助金支援は外注で対応できる体制を整えつつ、清水さんご自身は今後新たな事業を展開していく方針ですね

融資に関しては405事業や資本性劣後ローンについて、今も数社抱えています。今後間違いなく増えていくので、こちらのボリュームを増やしていくことで融資に関しての実力を高めていきたいです。
トップコーチングに関しては、今の補助金申請支援の過程でも、経営者と対話する機会があります。その中で、経営者と『3年後、5年後にどういう風になっていきたいですか』と、壁打ちもやっています。そこで『今のような壁打ちを顧問税理士の方と出来ているか』尋ねると、ほぼ100%『できていない。でもやらないといけないですよね』という話になるので、これはニーズがある、お役に立てることかなと考えています。

この、トップコーチングには、自分なりの想いもあります。
私自身、幼少時代からやっている剣道で人の2倍3倍と練習をしても強くなれないことに悩み、学生時代にノートに書いて自分の振り返りを始めました。そこで、努力する総量ではなくベクトル・方向性に意識を向けるようになり、自分の癖や弱点に対して効率のよい練習をして、その結果を振り返って…と、PDCAを回してきたことで着実に強くなることができました。以来、診断士の勉強をしているとき、独立起業を目指しているとき、そして今と、振り返りとPDCAを回すようにしてきました。また、自分一人ではブレてしまうこともわかっているので、コーチングやグルコンのように外部の力や環境を作ることにもお金も時間も使ってきました。

【中学生時代、剣道の大会での一枚】

継続的な経営支援を増やし、自社の経営コンサル業を完成形に近づけたい

この2年弱で顧客リストは200社程度になりました。今後、融資の支援も含めて顧客はさらに増えていくと思うので、その中から顧問契約で関わる先を増やして行きたいですね。顧問契約は収入の安定化ももちろん意識していますが、先に話した通り日々お客さんのニーズを感じていて、『継続支援するからこそ、出せる成果がある』という自分の想いがあるからです。
10-15社くらいの顧問先数があれば、年商4~5000万円を構築するビジネスモデルになる見込みです。それを実現して、起業から4,5年目くらいまでに経営コンサル業として完成形に持っていきたいです。 自社の体制としては、今のところの考えでは、コンサルタントは自分だけでやっていこうかなと考えていて、雇用するとしてもアシスタント1名の想定です。補助金申請支援などの専門家の力が必要なところは、引き続き社外のパートナーと協力体制を作っていきたいと考えています。

10年後は自分の知見を活かしたアドバイスや企画などでも価値を生み出せる存在に

今後10年くらいでの目標や目指すところはありますか。

10年後、自分が45,6歳になる頃には、『金持ち父さん貧乏父さん』に出てくるマトリックスでいう、『ビジネスオーナー』や『投資家』のフェーズにいたらいいなという想いがあります。3年前くらいに自分が作成した人生設計としても、40歳までは経営コンサルの仕事をやって、40歳からはどこかの会社の経営者になって、50歳になったら私の後継者に事業承継を始めて55歳で事業承継を完了させる。50歳からは並行して、地元の大学の大学教授をして地域経済の研究をする、みたいなことをやれたら楽しそうだなと考えた時期がありました。そんな風に、最終的には本質を突き詰めるような仕事につきたいという想いがあったのかなと思います。

やはり45歳、50代となる頃に、作業で価値を発揮するのは難しいと思うので、知見を活かしてアドバイスや設計、企画などで価値を発揮していきたいですね。

3年目以降は海外にも視野を広げ、自分の5年目6年目のビジョンを模索

活動エリアに関しては、引き続き東京と香川の2拠点はこだわっていかれるのでしょうか。

拠点に関してはこの2つに限らないかなと考えています。
沖縄に支店があるのもいいなとか、10年後にはシンガポールなどの海外での生活・ビジネスが出来るようになったら面白いなと考えたりもします。

『石の上にも3年』と言われますが、私自身最初の3年が大事な時期だと考えていて、起業してからの3年くらいはそれこそ寝食を忘れるくらい仕事に打ち込むつもりでやっています。来年2023年くらいからは、趣味にも時間を創れるようにしていきたいですね。
それから、5年目6年目に関して明確なビジョンがあるわけではありません。今後はビジネス視察を兼ねて、友人のツテをたどって海外にも出かけていきたいと考えています。

5.さいごに

P-CFOを必要とする事業者は全国に。顧客ニーズと自分の強みがマッチする肩書でチャンスが広がる

最後に、パートナーCFOに興味を持った方へ一言メッセージをお願いします。

私はパートナーCFO養成塾を受講して、今までなかった視点・視座を得ることができたし、視野も広がりました。現状からさらにマインドをアップデートしたいという方にはすごくおすすめです。

特に東京などの大都市以外の地方では、CFOや財務コンサルというと事業者さんからは身近な存在と感じてもらいにくいかもしれません。ですが、経営課題の明確化や、経営計画の策定とコントロール、金融機関との交渉や予実管理など、パートナーCFOで学ぶ内容がまさに求められているという場面は多々あります。私が財務部長代行という表現を使ってみているように、ご自身のアプローチしたい業種・業界提供できるサービスに合わせて工夫することで、たとえ地方であっても、中小企業の役に立てる機会を手にして行けると思います。

<編集後記>

仕事ではご縁のあった企業さんや紹介パートナーさんへのこまめな対応に加えて、その間にしっかりご自身や会社の振り返りをしたり、研修に参加したり…多忙な中でも緊急ではないけど優先順位の高いことを続けていらして素晴らしいなと思いました。
これからの益々のご活躍を応援しています!

<取材・文>第2期生 溝上愛
取材日:2022年11月10日