2024年8月28日

P-CFO 鈴木 紳平さん

Fintechでスタートアップ・中小企業の資金調達に「RBF」の選択肢を。
養成塾で得た将来への自信

株式会社Yoii Risk Management担当
中小企業診断士
鈴木 紳平(すずき しんぺい)さん

今回ご紹介するのは、パートナーCFO養成塾の第6期生(2023年6月~11月)の鈴木紳平さんです。
鈴木さんは、メガバンクと財務アドバイザリーで経験を積んだ後、2022年9月から金融系(フィンテック)のスタートアップ「株式会社Yoii」(以下、Yoii社)に参画しリスクマネジメント等を担当されています。また中小企業診断士の資格をお持ちでもあります。
今回のインタビューでは、「レベニュー・ベースド・ファイナンス(以下、RBF)という新しい資金調達手法を手掛けているYoii社での役割、そしてパートナーCFO養成塾での経験をどのように活用しているか等についてお伺いしました。

新しい資金調達手段「レベニュー・ベースド・ファイナンス(RBF)」とは何か

「その企業の将来見込まれる売上高を現時点で必要な成長資金に換える」という新たな資金調達の選択肢を提供している会社です。
具体的には「将来債権譲渡」というスキームで行っています。
RBFは、株式(エクイティ)や借入(デット)等の従来からある資金調達に加え、新たな調達手段として欧米や日本で注目を集めています。

Yoii社が当該企業の過去の売上高や財務データ等から未来の売上高を予測して、その予測売上高の一定割合を現時点で譲り受けることで当該企業に資金を提供します。当該企業の返済方法は、毎月の売上高の一定額をYoii社に支払いする形です。
借入ではないので金利という概念はなく、手数料を差し引いた金額を対価として提供する形式となり、これが資金調達コストになります。

(注)RBFのより詳しい仕組みは、Yoii社のサイト「5分でわかるRBF」参照。
https://yoii.jp/posts/revenue-based-financing

審査だけでなく、データサイエンティストと協同してスコアリングモデルを構築

私は2022年9月に入社しました。最初は事業開発ということで法人向けのセールスやベンチャーキャピタル(VC)等とのアライアンスの構築に携わりました。
その後、社内の議論で内部管理体制強化のために営業部門と審査部門を分離すべきということになり、銀行勤務時代に審査も経験した私が審査担当となりました。
具体的には、資金調達ご希望の企業(お客様)からの申込案件の審査、資金提供後の期中モニタリング、支払いが遅れたした場合の対応等です。

社内の公用語は英語

データサイエンスチームだけでなく全社で国籍に関係なく優秀な人を採用しているので、公用語は英語です。
データサイエンスチームでいえば、フランス、ジャマイカ、ポーランド出身の方がいますが、それぞれ修士号や博士号の取得者です。

銀行では国内と海外、中小企業から大企業、営業(融資)からストラクチャードファイナンスまで幅広く経験

大学卒業後の2006年、三菱東京UFJ銀行(現三菱UFJ銀行)に入行しました。最初は支店で中小企業営業を担当し、問題先企業も担当しました。
その後南米チリのサンティアゴ支店にスペイン語の語学研修生として派遣されました。当初半年間はホームステイをしながら語学学校に通い、その後3年間、現地のトレジャリー業務と拠点の運営企画を担当しました。
帰国してからは、ストラクチャードファイナンスの審査業務に従事し、主に船舶と航空機ファイナンスを担当。その後は大企業営業を担当しました。

銀行の変化の遅さ、コロナ禍、自分の年齢を考えて財務アドバイザリーに転職

15年近く在籍していると銀行のことは大体分かりますし、どの部署にも知り合いがいるような状況になるので仕事は進めやすく、とても居心地はよかったです。ただ、2020年から始まったコロナ禍で、世の中は相当変わるだろうと実感しました。この変化の波にできる限り乗った方が、大変なことはありつつも人生を楽しめるだろうなと思う一方で、大きな組織であるがゆえに銀行が変化に対応するのには時間がかかるだろうとも思いました。そして私の年齢が30代半ばだったので、キャリアを変えるならこの時期が最後のチャンスだと考え、転職を決意しました。

金融機関向けのM&Aの助言業務、事業会社のデット調達支援、スタートアップ向けの支援等をやりました。

とくに欧米の場合は、金融機関の自己資本比率規制(BIS/バーゼル規制)の影響で、金融機関が中小企業融資業務をドラスティックに縮小している現実があり、金融機関が撤退した穴を「デット・ファンド」が埋めています。その「デット・ファンド」と中小企業をつなぐ「デット・アドバイザリー」というサービスが発展しており、D社では「デット・アドバイザリー」も担当していました。

既存の銀行がカバーできない金融分野をカバーするプレーヤー=Yoii社に転職

そうなんです。

ただ「デット・アドバイザリー」をやっている中で、スタートアップを支援する機会がありました。
スタートアップは、資金を調達して赤字を掘りながら投資を続けて急激な成長を目指すという構造上、財務的には赤字や債務超過であることがほとんどですが、伝統的な金融機関の場合はBIS規制や債務者格付制度もあり、担当者個人にどんなに熱意があったとしてもそのような財務状況の企業に融資をすることが構造的に難しい現実があります。

しかし、そんな既存の金融システムではカバーできていないところに、資金提供できるプレーヤーがいるということを知り、そのようなプレーヤーについてと調べたり話を聞いたりしていく中でYoii社とご縁がありました。

【インタビューに答える鈴木さん】

Yoii社:リスクテイクして飛び込んでみた結果、非常にやりがいがある職場

まだ本当に人数が少ない段階だったので(社員番号は8番)、この先企業が成長するにつれて結構カオスなこともたくさんあるだろうなと思いつつ、そういうところに飛び込んでみたいと思ったんです。挑戦的な環境で奮い立つところがありまして。

例えば銀行員時代も延滞や倒産などの特別なシチュエーションが発生すると、しんどいなと思いつつも意欲が高まる性分でした。リスクはいろいろな側面から考えつつも、「まあ何とかなるだろう」と飛び込んできたので、このときもそのような心持ちでした。

おかげさまで仕事自体は非常に楽しくやっています。

私のこれまでの経験・知見をフルに活かしながら、前職では支援できなかったような企業の支援ができるというところは純粋にやりがいを感じています。
もちろんスタートアップなので組織的にもまだまだ未熟なところがありいろんな問題はありますが、楽しくやっております。

Fintech企業内の図書館に「中小・ベンチャー企業 CFOの教科書」。読んでビビビッときた

Yoii社に社内図書館があるのですが、そこに高森さんの本があったんです。読んでみて「こういう生き方があるんだ」と、ビビビッときて、非常に印象に残っていました。

それから、私は2010年に当時銀行で担当していた中小企業の経営者とまともに話ができるようになりたいと中小企業診断士の資格を取得していました。その後海外赴任のため活動を休止していましたが、「そろそろ中小企業診断士活動を再開しよう」と資格更新研修を探していたところ、高森さんが講師を務める研修が検索で出てきました。
「これはあの本を書いた方だ」と気づき、その資格更新研修を受講。その際にパートナーCFO養成塾のことを知り、受講を決めました。

養成塾では「自分でもできるかも」という自信がつき、体系的に学ぶことができた

一番大きいのは「自分にもできるかも」という、いい意味で根拠のない自信がついたことですね。同期生の中ではすでに独立している方がかなりいて、その方たちとお話する中で「パートナーCFOとして、こういう職業人生があるんだ」ということが、よりリアルに感じられました。

加えて、学びで得られるところも大きかったと思います。体系的に整理されていて、自分が実務の中で感じてきたことが理論となっていて、「やっぱりそうだよね」と腹に落ちする感覚がありました。
特に組織マネジメントの部分、たとえば信頼関係の構築や具体的なアプローチの仕方等を体系的に学ぶことができたのは、非常に大きかったと思っています。

たとえば、金融機関に新卒で入社された後スタートアップのCFOを務め、現在はご自分の会社を経営されている方や、養成塾を修了してすぐに案件を獲得された方などは、キャリアや行動力という点でも非常に参考になります。

【養成塾の会場だったBirth Kandaの看板前にて】

養成塾の組織作りのパートはYoii社でも活かせる

私の立場はCFOではないものの、Yoii社自身がスタートアップなので、養成塾で学んで得た知見がかなり活かせると感じています。
今一番活かせそうだと感じているのは、とくに組織作りのところです。どのように従業員をモチベートして権限を委譲してやっていくか。そんな点でも経営陣と一緒になってやっていきたいと思っています。

養成塾と中小企業診断士の両方のつながりで「スタートアップ研究会」に所属

養成塾の先輩(5期生)の伊藤一彦さんが代表を務める「スタートアップ研究会」(※)にお声がけいただき入会しました。
中小企業診断士の立場でスタートアップの支援を行うという研究会ですが、養成塾の人脈以上に活動が広がりそうで楽しみです。

また、現業が忙しくなかなか時間が割けないですが、副業は可能なので個別の案件で時間などの条件がマッチするものがあれば、個人でのパートナーCFO活動もやってみたいと考えています。

※中小企業診断協会認定の任意団体。中小企業診断士・士業専門家で構成
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000141109.html

既存の金融システムからこぼれ落ちたスタートアップや中小企業をデットで支援したい

今まさにYoii社でやっていることですが、スタートアップや中小企業といった既存の金融システムからこぼれ落ちてしまっているところに資金プラスアルファの支援ができるようなことを続けていきたいです。

そうですね。エクイティも面白いとは思いますが、デットの世界で生きていきたいですね。
銀行のことが好きなんです。金融の仕組みは複雑な規制が絡み合っていて面倒なことも多いですが、その仕組みを勉強して理解が進むと面白いなと思いました。
過去に様々な失敗があり、その反省から今の規制が出来上がっているわけですが、今は完全に規制が行き過ぎてしまい、硬直してしまったシステムに代わる存在として世界的にデット・ファンドが注目されているのだと思います。

パートナーCFOに興味をもったら、まずは飛び込んでみて。後悔はしない

体系的に学べるということと、同じような目標を持っている同志と出会える学びの場だと思うので、興味を持ったらぜひ飛び込んでみることをおすすめします。後悔はしないと思います。

【鈴木紳平さんのプロフィール】
株式会社Yoii Risk Management担当
中小企業診断士

早稲田法学部卒業後、2006年、三菱東京UFJ銀行(現三菱UFJ銀行)入行。銀行では融資、海外拠点(南米チリ)、ストラクチャードファイナンス等、幅広い業務を経験。
その後、デロイト トーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社に転職し、M&A、事業会社の資金調達、スタートアップ等に対する支援業務に携わった。
2022年9月、株式会社Yoiiに参画し現職。
資格面では2010年に中小企業診断士を取得。
学生時代は、中学高校は陸上部、大学ではアメリカンフットボール同好会(ランニングバック)に所属していた。

<編集後記>
鈴木さんにはとてもお忙しい中で時間を作っていただき、インタビューさせていただきました。新しい金融商品のためご苦労も多いようですが、早くも養成塾での学びや人脈は仕事や仕事以外での活動に活かされているようです。今後もますますのご活躍を期待しています。

<取材・文>
第2期生 森本哲哉
取材日:2024年6月28日