2025年4月23日

P-CFO 佐々木 健さん

企業の成長を加速させる”社外CFO”の新たな価値 ―― “かかりつけ医”としてのパートナーCFOという選択

SMBグロースパートナーズ合同会社 代表
佐々木 健(ささき けん)さん

今回ご紹介するのは、パートナーCFO養成塾第7期生(2024年6月~11月)の佐々木健さんです。佐々木さんは、NECの経営企画からキャリアをスタートし、PwCコンサルティング、KPMG FASでのコンサルタント・M&Aアドバイザリー経験を経て、JCOM(CATV局統括運営)では経営戦略本部長を務めました。その後、ITベンチャー企業や外資ファンド傘下企業でCFOとして活躍。資金調達総額280億円以上、M&A及びPMI実績10社以上など、大きな成果を上げてきました。

長年のCFO経験を活かし、2024年6月にSMBグロースパートナーズ合同会社を設立。現在は、中小・ベンチャー企業向けに社外CFOサービスを提供し、資金調達支援や人材採用支援を入口に、企業の持続的な成長をサポートしています。その支援スタイルは、「企業のかかりつけ医」として経営者と共に考え、共に実行する伴走型のアプローチが特徴です。

外資系企業でのCFO経験と経営コンサルティングの両方のバックグラウンドを持ち、パートナーCFO養成塾で知識を体系化された佐々木さんに、現在の事業内容や起業に至った経緯、パートナーCFO養成塾での学び、そして経営者として、個人としての今後の展望についてお伺いしました。

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中小企業の成長を支える”社外CFO”~経営者と二人三脚で企業価値を高める

会社名にあるSMB(Small and Medium Business)が示すように、中小・ベンチャー企業の経営者向けに社外CFOとして成長を支援するコンサルティング会社です。この会社を立ち上げたのは、これまで10年以上、ITベンチャー企業や外資ファンドが買収した会社でCFOを務めてきた経験が基になっています。

以前、私が勤務していた会社も、私が入社する前は「もっと資金があれば」「もっと優秀な人材がいれば」安心して成長のアクセルを踏めるのに……という状況でした。同業の社長方の話を聞いていても、売上以外の悩みとして「人」と「お金」の問題が非常に多かったのです。

そこで、パートタイムのCFOとして企業に入り支援をしていこうと考えました。 私の経験がそこで活かせると思ったのです。中小規模の会社がフルタイムでCFOを雇うとコストが高くつきますし、この規模の企業ではフルタイムのCFOが必要なケースは少ないでしょう。ですから、シェアリングサービスのような形でCFOを活用してもらえるのが最適だと考えました。

大きく分けると、2つの領域でサービスを展開しています。「CFOの領域」としては資金調達支援、損益・キャッシュフロー改善支援、中期事業計画・財務モデリング策定支援、投資計画の評価支援、M&A支援などがあります。また、「管理部門全体をカバーする領域」として、幹部人材の採用支援や組織マネジメント支援なども行っています。

特に力を入れているのが財務モデリングです。私が財務モデリングを得意としていることもあり、これまで勤務した会社でも、入社後3〜6カ月で必ず損益・キャッシュフロー・バランスシートの財務モデルを作成してきました。財務モデリングの作成を通じて「なぜこの費用がこう発生するのか」「売上はどういう構造で生まれ、どうキャッシュフローにつながるのか」といった理解が深まるからです。ですから、現在の支援先にも必ず財務モデリングは行うようにしています。

この財務モデリングは、資金調達の際に非常に役立ちます。経営者が目指すアグレッシブなベースケースと、絶対に手堅く達成できる保守的なケースの両方を作成し、後者で「この会社は最低でもこれだけのキャッシュフローが見込める」と示すことで、金融機関に安心感を与えることができます 。

経営者の皆さんは実は自身の得意分野があって起業されています。営業が得意だったり、特定の製品やサービスを開発するのが得意だったりするわけです。逆に私のような管理系が得意だから起業する方は少ないと思います。

そこで私が「管理系の部分はしっかり見るので、社長は本業に直結する部分を安心して前に進めてください」と支援することで、会社全体の成長速度を速めることができます。 私が単なるコンサルタントではなく「パートナー」を目指すのは、コンサルティングという第三者的立場ではなく、共に考え実行する姿勢が大切だと考えるからです。提案して終わりではなく、私は実際に経営者と一緒に歩む伴走者でありたいと思っています。

マーケットインの発想で、経営者の「Must Have」のニーズを捉えて顧客開拓

主に経営者交流会を通じて経営者の方と知り合います。最初は手探り状態で、ホームページを作ったり無料セミナーを企画したりしましたが、全く問い合わせがありませんでした。

あるアドバイスを受けて、「プロダクトアウト」ではなく「マーケットイン」の発想で、実際に経営者交流会に参加して生の声を聞くようにしました。「私はまだ事業を始めたばかりでよくわからないので、経営者の皆さんがどんな悩みを抱えているか教えていただけませんか?」と尋ねると、みなさん親切に教えてくれます。

そこから「経営者は実はこういうことに悩んでいるんですよね」と共感の糸口を見つけ、関係性を築いていきます。興味を持ってくれた方とは個別面談に進み、そこから1〜2回で仕事につながるケースが多いです。

重要なのは、経営者の「Nice to have」ではなく「Must have(必須)」のニーズを捉えることです。資金調達や人材採用は差し迫ったニーズで、成果もわかりやすいので、これらをフロントエンド商品として提供しています。そこで実績を作り、信頼関係を築いた上で、顧問契約というバックエンド商品に移行する流れです。

第一に、フルタイムCFOを雇うステージでない企業が、それと同等の経営パートナー機能を利用できることです。コストも抑えられるので、中小企業にとって手軽に高品質なCFOサービスを活用できる点が大きな価値だと思います。

また、「共に考え、共に解決する」プロセスを踏むことで、腹落ちした施策となり、組織の実行力が高まります。さらに、伴走型の支援スタイルを通じて幹部人材を育成し、徐々に社内でCFO機能を担える体制を作っていくこともサポートしています。

私は「かかりつけ医」という表現をよく使うのですが、企業の健康状態を診て、適切な処方箋を出し、必要に応じて専門医を紹介するような役割です。企業の成長フェーズに合わせて必要なサポートを提供していくことを心がけています。

SMBグロースパートナーズ合同会社ホームページから 業務の全体像

コンサルタントからCFOへ~外資系企業での経験が育んだプロフェッショナル意識

NECでは会社派遣でMBA留学をさせてもらっていたのですが、帰国後に「日本の大企業の中ではやりたいことができないな」と感じるようになりました。当時はいろいろなコンサルティング会社を見ていましたが、私自身がやっていたのは戦略というより、現場に行って業績改善をするような仕事だったので、戦略コンサルティングにはピンときませんでした。

一方、PwCはもう少しビジネスコンサルに近いところで、話を聞いていて非常に興味がわきました。「これなら自分でもできそうだ」と思い、一歩踏み出すことにしました。最初の転職は、当時当たり前だった「終身雇用」を捨てる勇気がいる決断で、上司に伝えるまで本当に緊張しましたね。

振り返ると、私は大企業の組織文化に向いていなかったのかもしれません。組織の中では政治的な要素も大きく、優秀な人が必ずしも上に行けるわけではありません。それに、何かを決めるにも多くの人がネガティブチェックをして、なかなか事が進まない。

その後、徐々に小規模な会社で働くようになると、意思決定が早く、社長とほぼ2人で何でも決められるスピード感があり、それが私には合っていました。

やはりPwCへの最初の転職は大きな節目でした。日本の大企業では若手が上の人に意見することはあまり評価されませんが、コンサルタントの世界では自分の意見をきちんと主張しないと評価されません。

クライアントに対しても、厳しい議論を社内でしておくことで、どんな質問にも答えられる準備ができます。ここで「プロとしての意識」が確立されたと思います。

その後、事業会社に移りましたが、従業員感覚はなくなっていました。常に「会社に雇われているプロフェッショナル」という意識で、経営陣やファンド株主を「クライアント」として接する姿勢を持ち続けました。

もう一つの大きな転機は、JCOMでIR業務を担当したことです。特に外国の機関投資家との対応は厳しいものでした。彼らは生活がかかっているので、その場しのぎの説明をすると3ヶ月ごとのフォローアップで厳しく追及されます。

冷や汗をかきながら、外国の機関投資家と英語で1対多のミーティングをこなす経験は非常に鍛えられました。そこで学んだ投資家との向き合い方や彼らのメンタリティの理解は、その後のVC資金調達やファンド株主との関係構築にも活かされています。

MBA留学では、経営の様々な領域について一通りの知識を得られるので、その後の実務において新しい分野に入りやすくなります。詳細は自分で勉強が必要ですが、エントリーのハードルが下がるのは大きなメリットです。

特に私の場合、ファイナンスに強いビジネススクールだったので、ファイナンス理論のバックグラウンドをしっかり身につけることができました。現在、企業価値評価などを行う際にも、その知識は役立っています。

ただ、一番厳しかったのは1年目の学期中で、膨大な予習リーディングがあり、1日平均4時間睡眠という生活でした。アメリカ人でさえノイローゼになってドロップアウトする人がいる厳しさでしたが、それを乗り越えた自信は大きな財産です。

また、留学生同士の横のつながりも貴重でした。当時は日本人留学生も多く、60人ほどいて、彼らとの関係は今でも続いています。学生時代の友人とビジネス上の知り合いの中間のような存在で、利害関係なく相談できる人脈ができたことも大きな資産です。

点と点が線で結ばれる瞬間~パートナーCFO養成塾で気づいた新たな可能性

前職の外資ファンド傘下企業では、私が60歳になる頃、将来のイグジットを見据えて経営陣を入れ替える計画がありました。私も後継者を育てる立場でしたので、「自分自身はこの先どうしようか」と考えていたところ、たまたまFacebookでパートナーCFO養成塾のオープンセミナーの案内を見つけました。

セミナーに参加して「これだ!」と直感的に思いました。私自身、これまでパートナーCFOに関連するような仕事はやってきましたが、それが自分のビジネスになるというイメージがありませんでした。「自分の経験をプロダクトとしてビジネス化できるんだ」と急に霧が晴れたような感覚になり、2日後には会社設立の準備を始めました。そして2024年6月に起業して、すぐにパートナーCFO養成講座を受講しました。

私自身もともと基本的な実務スキルや経験はあり、養成塾で学んだことの中にはすでに知っていることも少なくありませんでした。それは変わらないところです。ただ、それらの知識や経験を体系的に整理し、言語化して人に伝えられる形にすることはできていませんでした。そのため、経験や知識をプロダクト化して売れる状態にできていなかったのです。

養成塾を経て一番変わったことは、それまで実務でやってきたことが体系的に整理され、言語化されたことです。

高森さん(パートナーCFO協会代表)がすごいと思うのは、実務知識を体系立てて整理し、言語化した上で、それをプロダクトとして提供できる形にまで昇華している点です。さらに養成塾では多くのテンプレートやフォーマットが提供されるので、一から作る手間が省け、多くの案件を効率的に回せるようになりました。

養成塾なしでは、きっとまだ「どうしようかな」と考えている段階だったと思います。今のように起業し、短期間で事業を軌道に乗せることは難しかったでしょう。
自分の実務を整理する良い機会になったという意味でも、養成塾での学びは非常に大きなものでした。

P-CFOサロンでの講演やセミナーを通じて、最新の動向や知識を共有してもらえるのはとても参考になります。特に、資金調達やVC業界の最新動向などは、フロント商品としてクライアントに提供することもあるため、業務に直結する有益な情報です。

また、先輩パートナーCFOの成功事例を知る機会があることで、自分の2〜3年先の課題を先取りして考えられるのも、大きなメリットだと感じています。実際に先輩パートナーCFOのお話を伺って、「自分もいずれ同じような壁にぶつかるかもしれない」と感じる場面で対応策を考えられていて非常に参考になりました。

さらに、横のネットワークとして同業者の仲間の存在もとても心強いです。養成塾を修了したメンバーだけのコミュニティがあることで、実際に案件で困ったときにすぐに相談できる環境が整っています。

たとえば、あるクライアントの短期融資が2件連続で断られた際に、銀行出身の協会メンバーに相談したところ、的確なアドバイスをもらい、その後の長期融資では無事に成功しました。このように、実務に即した知恵をすぐに得られる環境は、パートナーCFOとして活動するうえで非常にありがたいです。

クライアントとの打ち合わせ風景

「かかりつけ医」として企業の成長を支え続ける~将来の夢と目標

まだ起業して1年も経っておらず、現在はフロントエンドのスポット案件が中心であるため、まずは現在のビジネスを安定させることが第一です。具体的には顧問契約の数を増やしていきたいと考えています。現在は2件ですが、5〜6件程度まで増やせればビジネスとして安定すると思います。

次のステップとしては、どうやってより多くの経営者に役立てるかを考えています。自分一人でできる範囲には限界があるため、人を雇うか、緩やかなアライアンスで対応範囲を広げるか、あるいはセミナーや研修など一対多のビジネスモデルを構築するかなど、いくつかの選択肢を検討しています。

ただ、人を雇う場合、私のこだわりや品質を担保できるかという課題があります。緩やかなアライアンスであれば、それぞれの専門家と連携して幅広いニーズに応えられますし、私自身がコンサルティング発注側と受注側の両方を経験しているので、コンサルタントへの依頼の仕方も熟知しています。たとえばベンチャー企業に対し、VC(ベンチャーキャピタル)からの資金調達支援もやっていますが、トラクションを強化するために商品開発・マーケティングに強いコンサルタントを巻き込んで連携するスキームで協業しています。

いずれにしても、まずは案件をたくさん回して実績と知見を蓄積し、その上で次のステップを考えていきたいと思います。

仕事と趣味の境目がなくなるほど、今の仕事は楽しく、「趣味は仕事」と言えるほどです。ですからプライベートで「これがやりたい」と強く思うことは少ないのですが、唯一、キックボクシングは別です。もう10年ほど続けていて、実は試合に出ることを考えています。

もともと「60歳になる前に一度は試合に出たい」と思っていたのですが、コロナ禍で練習ができなくなり、モチベーションも下がっていました。しかし、最近は「このまま迷い続けていたら一生出られないかもしれない」と思い直し、挑戦することに決めました。もちろん、安全に配慮されたビジネスマン向けの大会です。

9月に試合があるのでエントリーする予定です。ただ、一人で事業をやっているので大きなケガはできませんから、その点は気をつけます(笑)。

週末は愛犬と過ごして、癒しの時間を楽しんでいます

「すぐに元が取れる」クオリティも実務適応性も優れたパートナーCFO養成塾

パートナーCFO養成塾は、費用はそれなりにしますが、リターンは十分にあります

講座の質も非常に高く、実務に直接応用できるテンプレートも充実しています。他の講座も受けてきましたが、クオリティと実務適応性の両面で非常に優れていると思います。

私自身も実際に開業して短期間でクライアントを獲得できており、過去の受講者インタビューで「すぐに元が取れます」と言われているのは本当だと実感しています。

費用対効果が高い自己投資なので、パートナーCFOのビジネスを志す方には強くおすすめします。宣伝文句のようになってしまいますが、本当にそう思っています。ぜひ検討してみてください。

SMBグロースパートナーズ合同会社 代表
佐々木 健さん

【プロフィール】
SMBグロースパートナーズ合同会社 代表 日本パートナーCFO協会会員
経営企画11年、IR4年、コンサルティング10年、CFO10年のキャリア。経営企画の経験も長いことから、経営全般の課題に幅広く対応。 慶應義塾大学 経済学部卒 ペンシルバニア大学ウォートンスクール 経営学修士(MBA)
NEC、PwCコンサルティング、KPMG FASなどを経て、JCOMでは経営戦略本部長を担当。その後スマートインサイト(ITベンチャー)、外資ファンド傘下企業でCFOを歴任。2024年6月にSMBグロースパートナーズを設立し、中小・ベンチャー企業向け社外CFOサービスを提供。
支援企業数:80社以上 資金調達実績:280億円以上 人材採用実績:50名以上 M&A及びPMI実績:10社以上 IRでの対応機関投資家数:100社以上
SMBグロースパートナーズ合同会社 https://www.smb-gp.com/

<編集後記>
取材を終えて、佐々木さんの話からは、これまでの豊富な実務経験と理論的バックグラウンドが融合した、非常に実践的なビジネスモデルが見えてきました。大企業からベンチャー企業まで、経営の中枢でCFOとして培った知見中小企業の成長に役立てるという明確なミッションが感じられます。

特に印象的だったのは、「共に考え、共に実行する」伴走型のアプローチです。単なるコンサルティングではなく、経営者の右腕として実務も担いながら会社の成長を加速させる――そんな「パートナーCFO」というキャリアは、財務・経営管理のプロフェッショナルの新たな可能性を示していると思います。私はパートナーCFO養成講座の同期生なのですが、これからも佐々木さんの歩みを学びながら進んでいきたいと思います。

取材・文:第7期生 中郡 久雄
取材日:2025年3月24日