2021年7月21日

P-CFO 鈴木寿一さん

銀行員からパートナーCFOへ
戦略・信用・目利き力で顧客と共に成長する

ストラスコンサルティング 株式会社
代表取締役 鈴木 寿一 (すずき じゅいち)さん

今回ご紹介するのは、パートナーCFO養成塾の第3期生(2020年6~11月)の鈴木寿一さんです。
外資系投資銀行在職中に養成塾を受講しただけでなく、受講中にパートナーCFOとして独立された鈴木さんに、独立に至る経緯や今のお仕事にかける想いを熱く語っていただきました。

【プロフィール】
ストラスコンサルティング株式会社 代表取締役
東京都出身。大学卒業後、住友銀行(現、三井住友銀行)へ入社。個人富裕層、中小中堅企業、上場大企業取引を経験し、3年連続ベストデイール賞。2006年、米ゴールドマンサックス証券、2009年、仏クレディアグリコル証券・銀行へ移り、資本市場部門にて大企業グローバル財務戦略、新規顧客開拓。2年連続アジアトップセールス。2020年より現職。
プライベートでは、高校、大学、社会人でアメリカンフットボールの選手。少年サッカーのコーチでもある(東京都少年サッカー連盟 第五ブロック トレーニングセンター所属)。

(ストラスコンサルティング株式会社)
事業内容
・経営コンサルティング
・企業経営における外部経営参謀(パートナーCFO®︎)
(ディスカッションパートナー、中小ベンチャーパートナーCFO)
事業計画の策定を通じた成長戦略導出・実行支援、銀行借入や資本政策による資金調達、組織マネジメントを目的とした人材採用・育成、M&Aアドバイザリーなど。
・成長ステージの歪みに悩む中小ベンチャー企業の三大課題(①キャッシュフロー、②組織マネジメント、③事業計画実現)を中小ベンチャーパートナーCFOがディスカッションパートナーとして解決します。そして成長の歪みを乗り越えて、勝ちパターンの発見、会社の安定化、事業の着実な成長を実現し、ミドル、レイター、そしてEXIT(IPO、M&A、優良中堅)へ導きます。
URL:https://strusconsulting.com/

“50代のやり残した感”の答えは養成塾にあった

鈴木さんは養成塾を受講中に独立されましたが、まずはその辺りの経緯からお話いただけますか。

私は、新卒で入った住友銀行(現三井住友銀行)と外資系投資銀行を合わせて約30年、金融機関で働いてきました。それぞれの職場は刺激も多く、取引先からも評価をいただくなど非常にやりがいがあったのですが、自分の年齢が50代になると漠然と「やり残した感」や「モヤモヤ感」が増してきました。

「50代の葛藤」ですか? 私も同年代の銀行出身者なのでよくわかります。

外資系投資銀行の場合、年齢が50代になると多くの社員がアーリーリタイヤしていきます。

しかし私はその流れに乗るのではなく、「これまでの30年間の経験を活かすことができる別の道はないのか」を模索していました。 そんな中で、あるバイオベンチャー企業のCFOのオファーを頂きました。受けるかどうか非常に悩んだ末に、結果的にはお断りしました。自分の年齢を踏まえて、経験のなかったCFOでベンチャー1社にフルコミットすることに躊躇したことが主な理由です。

ちょうどその頃にパートナーCFOの存在を知り、「中小・ベンチャー企業 CFOの教科書」を読み、これなら「モヤモヤ感」が解消できるかもしれないと考え養成塾に入りました。

受講されてみていかがでしたか。

「漠然としたやり残し感」や「自分は他に何ができるのか」という「モヤモヤ感」は解消されました。

このやり方なら、コンサルタント経験のない私でも一度に複数のクライアントに関与でき、更に自分の知識や経験もこれまでの倍以上のスピードで積み上げていけると思ったからです。そして、私の知人たちにも尋ねたところパートナーCFOのニーズは絶対にあると言ってくれましたので、この道で間違いないと確信しました。

P-CFOの仕事:外部者でありながら内部に入り込む

現在のパートナーCFOのお仕事について、ご説明いただけますか。

現在3社と契約しています。

最初に契約したクライアントは、地方に拠点を置くベンチャー企業です。

私のミッションは組織マネジメント系の業務で、そのためには会社の業務はもちろんのこと、スタッフのことをよく知ることが重要と考えて、当初の約半年間は地方都市にほぼ常駐していました。東京にいる私からみると長期出張のような形です。

業務内容としては、進行中の大きなプロジェクトの仕上げであったり、肩書にこだわることなくスタッフと一緒にクライアント候補に対する営業、金融機関周り、そして業務提携先などにも行き勉強する傍で、スタッフ1オン1ミーティングをすることで全体把握を進めたりしました。

ベンチャー企業なので課題はいろいろありますが、私が関与しているのは採用方法の改善やスタッフのリテイン策、人事評価制度の構築等です。次のステージへ進むための人事評価制度については、その道のプロと組んでやることになり、その人選も行いました。

かなり深く経営に関与されていますね。他のクライアントはいかがでしょうか。

2社目は飲食店です。メインはイタリアンですがそれ以外の業態も手掛けています。

昨今のコロナ禍で飲食業界全体が大変な状態になっていますが、このクライアントも例外なく甚大な影響を受けており、なんとか改善策を打つべく施策を一緒に考えて実行しています。

SNSでの情報発信やテイクアウト、今はECサイト立ち上げやEC用メニュー、有名シェフとのコラボ企画、新業態のパイロット店舗などいろいろと仕掛けているところです。

私はこれまで営業系の業務にずっと携わってきたので、クライアントと一緒に売上アップの施策をいろいろ考えて実行する事業企画の仕事は楽しいです。

3社目は不動産コンサルの会社です。

こちらも本業がコロナ渦で低迷する中で、新規事業立ち上げに向け事業再構築補助金(中小企業庁所管)の申請をサポートしました。

既存のクライアントの仕事以外の時間は、新規クライアント獲得に向けてパイプライン作りや自己研鑽に充てています。

業種はバラけていますね。

よく「鈴木さんはどの業種が得意なんですか?」と尋ねられるんですが、現時点ではとくに絞ってはいません。

三井住友銀行の本店営業部にいたときには、化学、薬品、食品、窯業の各業界を担当したのでそれらについては猛勉強しましたが、中小・ベンチャー企業でそれらの業種はほぼありません。

今は、いわゆる「業種の専門性」ということよりも、パートナーCFOとしてのスキル私のこれまでの経験などがクライアントにご評価いただいているのではないかと思います。

銀行員時代の財産=目利き力

具体的にはどのような価値をクライアントに提供されているのでしょうか。

お陰様で30年の間に数多くの企業や人と関わらせていただきました。

その中には、中小・ベンチャー企業から世界的な大企業になった会社もいくつかあります。

たとえば、今から20年前、地元から東京に進出したSPA(アパレル製造小売業)を担当しましたが、そこは今や世界的な有名ブランド企業になりました。

同じように地方から出てきた家具販売会社は、現在では家具業界にとどまらず30期以上増収増益を続け、様々な業態を取り込んで急成長しています。

また、今や世界的な投資会社のようになってしまった会社は、海外携帯電話のキャリアを買収した直後くらいから担当になりました。

これらの会社に共通しているのは、経営者から店舗スタッフまで浸透している貪欲なまでの成長意欲です。

とくに地方から出てきた会社は、東京進出当時はそのときの業界大手から見れば「新興勢力」扱いで業界や金融界からも軽く見られていたのですが、管理部門のスタッフが銀行に対して「何か新しいことをやりたいから提案してほしい」と常に言ってくるような感じでした。こんなことは経営者や営業部隊ならありますが、守りの管理部門が言ってくる企業はなかなかありません。

そのような会社と幸いにもメインバンクとして深く付き合っていくと、会社の業務だけでなくオーナー関連の仕事や人に絡む仕事等、本当にいろんなことを経験することができました。

また、大企業になってしまうと、銀行の担当者レベルでは先方の経営陣とは接する機会が少ないのですが、中小・ベンチャーの規模のときなら先方の経営陣とも直接やりとりができることも得難い経験でした。

新興企業以外では伝統的な東証1部上場企業も担当しましたし、全国の国立大学を回って資産運用業務の受託もしました。外資系のときは新規開拓もかなりやりました。

ビジネス書には書いていないようなことも経験されたわけですね。

もちろん、今の私のクライアントにそのまま話すことはできませんが、私なりの解釈も加えたエッセンスは伝えることができますので、とくにベンチャー企業の経営陣にはものすごく役立つと思います。

これら30年間の金融機関で携わった企業は1,000社を超えますので、その経験やスキルを一言で言うと「目利き力」だと思います。事業を見る目、企業を見る目、人を見る目、など。こんなことをクライアントに提供していきたいですね。

アメフト選手とサッカーコーチの経験も経営の役に立つ

話題を変えますが、スポーツの選手やコーチの経験が仕事に役立っているという方は多いと思うのですが、鈴木さんはいかがでしょうか。

アメフトについては、高校、大学、社会人選手として10年やりました。

アメフトの社会人リーグでの試合中の1コマ(東京ドーム)。11番が鈴木さん。

サッカーのコーチは、長男が始めた18年前から関わっています。

現在は、「東京都少年サッカー連盟 第五ブロック トレーニングセンター(トレセン)」というところで、「アンダー12」(12歳以下)の少年・少女たちのコーチをやっています。

「トレーニングセンター」というのは、様々な競技ごとに将来の日本代表になる選手を育てるために、各ブロック加盟チームから選抜された優秀な選手たちに対して、より良いトレーニング機会を与える育成強化の場として活動している組織です。

私はサッカー選手としての経験はありませんが、アメフト選手として体の使い方・動かし方はよくわかっていますし、少年サッカー指導に関わるようになってからフィジカルトレーナーやテーピングの資格なども取得しましたので、それらの面で貢献しています。実際に私が指導した子供たちは、転びにくくなったり怪我が少なくなっています

能力の高い子供たちはどうしてもオーバートレーニングになりがちです。かつ、この育成年代特有の成長痛に悩まされる選手も多く、そうなると怪我をして半年とか1年休まざるを得なくこともあります。小学生のときの1年間は非常に長く可哀そうなので、そのようなことにも配慮しながらコンディショニングの指導をしています。

小学生年代からコンディショニング?と驚くかもしれませんが、今ではサッカー日本代表がW杯に当たり前のように出場したり、日本代表選手の大半が普段ヨーロッパでプレーしているのも、ジュニア年代からいろんな競技の良い部分を取り入れて育成している効果が出ています。日本代表を頂点とするピラミッド構造の育成システムの賜物であり、成るべくして成った成果です。

かなりレベルの高いことに取り組まれているんですね。他のコーチはどんな方たちですか。

私はボランティアですが、私以外はプロのサッカーコーチです。

「外資系あるある」なんですが、外資系企業はボランティア活動には非常に積極的で理解があるので、当時勤務していた外資系投資銀行でもコーチがある日は、周囲が「早く帰れ」と言ってくれる環境でしたのでやりやすかったです。

実のところは、外資系金融の仕事のハードなメンタリティーをキープするためにサッカーコーチをやってきたというか、心のバランスを取っていたという面も無きにしもあらずでした(笑)。

少年サッカーの指導場面。未来の日本代表を目指して、みんな真剣な表情。

クライアントを間接的につなぐ

クライアントを複数持つと、意外なところで間接的につながることがあります。

飲食店のクライアントの厨房では、20代の若いスタッフたちが手に火傷をたくさん負いながら一生懸命料理を作っています。

先日、新規プロジェクトでリーダーになったある若手スタッフの腕に無数の火傷跡を見つけました、本人はあっけらかんとしていましたが、若い女性なので、夏には腕を出した格好もしたいだろうと思い、クライアントが作っている「幹細胞化粧品(クリーム)」をそのスタッフにプレゼントしました。店頭で買うと20,000円くらいしますが、幹細胞の効果で自然治癒力が増して火傷の跡も消えやすくなるんです。

そのスタッフの方はものすごく喜んだのではないですか。

そうですね。

ただ、飲食店の社長は笑いながら「あいつはこの商品の価値がわかっていないんじゃないか」みたいなことをおっしゃってました。

私としてはいつかわかってくれればいいだけですし、それよりも現場でこうやって頑張っている人たちを見てくれる人がいることを知ってもらうことで少しでも元気になり、それによってその会社全体の雰囲気が良くなってくれればいいなと思っています。

目指すこと:戦略と信用と目利き力を使って、共に成長する

飲食店の若手スタッフのお話で鈴木さんの仕事に対するスタンスが垣間見えましたが、最後に鈴木さんの経営理念や今後についてお聞かせください。

私が設立した「ストラスコンサルティング株式会社」「ストラス」は私の造語で、Strategy(戦略)とTrust(信用)を組み合わせて作りました。

住友銀行では、「住友の事業精神」の「我が住友の営業は、信用を重んじ確実を旨とし、以てその鞏固(強固)隆盛を期すべし」を叩きこまれました。

それ以来、「信用」は私がビジネスする上で最も重きを置いているものであり、社名にもその想いを込めました。

また、大学時代のアメフトチームのモットーも大好きで、座右の銘にしています。

戦士への伝言

自分と他人を比較してはいけない!
比較すべきは昨日の自分自身である!

私としては、謙虚さと意志の強さを持ち、本質的な仕事の価値を高めることに没頭するプロフェッショナルでありたいですし、成功した時は窓の外を見て成功の要因を見つけ出し、うまくいかない時は鏡に映る自分に責任があるという思考様式でクライアントと接して、共に成長したいと考えています。

パートナーCFOとして独立してまだ日が浅いのですが、クライアントからいいことも悪いことも直接反応が返ってくることが何より励みになっています。

銀行のように組織の一員として仕事をしていると、「自分のやっていることは、本当にクライアントのためになっているのか」と感じることも多かったのですが、この「モヤモヤ感」も今は解消しました。

そういった意味で、パートナーCFOは「自分がやりたかったことはこれだ」と思える仕事です。

(編集後記)
鈴木さんのお話を伺っていると、鈴木さんの思考の根底には「スポーツマンシップ」が流れているように感じます。
座右の銘がアメフトチームのモットーですし、「信用」は住友財閥の社則でもありますが、スポーツにおいてもチームワークの基盤になるものです。「戦略」も試合で勝つためには欠かせません。
ご自身の会社名に「戦略」と「信用」を組み込んだ想いがよくわかります。
そして、仕事で目指しているのがクライアントとご自身の成長であり、サッカーコーチとして目指しているのは子供たちの成長。飲食店の20代スタッフに関するエピソードは、教え子の成長を願うコーチの目線でもあります。
「ストラス」の名のもとでパートナーCFOの仕事が隆々となることだけでなく、いつか鈴木さんの教え子がサッカー日本代表になることも期待しております!

<取材・文>第2期生 森本哲哉
取材日:2021年6月14日