2022年2月25日

P-CFO 梅田 智起さん

Jリーグ審判 × パートナーCFO
夢と仕事を両立し「3つのC.F.O.」を追求する

ペリドット コンサルティング・パートナー代表
梅田 智起 (うめだ ともゆき)さん

今回ご紹介するのは、パートナーCFO養成塾の第4期生(2021年6月~11月)の梅田智起さんです。
経営コンサルタントとして活躍する一方、週末にはサッカーJリーグの審判として全国を飛び回っています。
子供の頃からの夢だったJリーグに関わることと仕事を高いレベルで両立させる秘訣、そして梅田さんのビジョンについて伺いました。

【プロフィール】
ペリドット コンサルティング・パートナー
https://www.peridotcp.biz/

Future Gene Technologies株式会社 COO/CFO(常勤)
https://futuregene.tech/

埼玉県生まれ。大学在学中は学習塾を2年間経営。大学卒業後は埼玉県の高校に英語教師として勤務。外資系生命保険会社に転職し、世界中の保険営業パーソンのトップ5%の成績を修めMDRT会員に選出される。2021年、ペリドット コンサルティング・パートナーとして独立。
プライベートでは小学校から大学までサッカー選手。日本サッカー協会1級審判員。転職と独立は、Jリーグ審判と仕事の両立のため。

「My Vision」として「3つのC.F.O.」を追求することを掲げ、日夜奮闘中。
 Chief Financial Officer 日本経済の参謀役
 Chief Football Officer  サッカー界の黒子
 Chief Future Officer  夢を語れるオヤジ

(資格)
中小企業継続支援士(認定経営革新等支援機関)
Fundamental Marketer(米国マーケティング資格)

平日は経営コンサルタント、週末はJリーグ審判

梅田さんはJリーグ審判というユニークなキャリアをお持ちですが、仕事や生活はどのようなパターンなのでしょうか。

経営コンサルタントとして独立してから1年ほどになりますが、平日は顧問先との面談、週末や休日はJリーグの審判員として北海道から沖縄の試合会場に出向くという感じです。

顧問先に対しては、基本的には月2回程度面談して、その時々の会社の課題を解決していきます。資金繰りに課題があれば、経営者だけでなく経理担当の方にも入っていただいて改善策を進めたり、売上アップのためのマーケティングが課題であれば、営業担当者と同行して支援をします。
最近は、コロナ禍対策として政府や自治体が様々な補助金を用意しているので、補助金申請のお手伝いをすることもあります。私自身は補助金申請についてはそれほど詳しくないので、補助金申請支援に強い方とチームを組んで対応しています。

顧問先の業種は卸売業、建設業、運送業、サービス業など様々で、地理的には埼玉と東京が中心です。

サッカーの審判は試合中かなり走ると聞いたことがあります。平日は仕事、休日はプロの試合の審判というのは肉体的にはかなりハードではないですか。

一般的に、90分で12キロメートル程度走りますが、現役の選手だった高校・大学のときよりも今の方が走れますよ

プロの選手たちと一緒に走らなければならないので、トレーニングは毎日欠かさずやっています。単にランニングをするのではなく、心拍数などの数値管理もしながら科学的なトレーニングメニューをこなしています。

怠惰な日常を過ごしている私にはとても真似できません(笑)。
審判もいろんな資格があるようですが、梅田さんはどのような資格ですか。

サッカー審判のライセンスとしては1級から4級まであり、私は1級です。
1級とは、「日本サッカー協会(JFA)が主催するサッカー競技を担当することができる」ライセンスなので、Jリーグの審判ができるのです。

プロの審判ということでしょうか。

いいえ、私はプロではありません。
「プロフェッショナルレフェリー制度」というものがあり、これに該当する審判がいわゆるプロということになります。
サッカーの審判は1級から4級まで約26万人いて、1級は215名です。1級のうちプロの審判は13名しかいません。

(日本サッカー協会 新番制度概要)
http://www.jfa.jp/referee/system/

サッカー少年から高校教師

審判と仕事を両立するようになった経緯を伺いたいのですが、サッカーはいつ頃から始めたのですか。

地元は埼玉県川越市ですが、サッカーは小学2年生のときから始めて、中学、高校、大学と選手でした。

先ほど、コンサルティングの仕事と審判を両方やるのは肉体的に大変ではないですかと聞かれましたが、生活リズムとしては小学2年生のときから変わっていません
つまり、学生のときは平日学校に行き、土日はサッカーの試合をする。社会人では平日仕事をして、土日はサッカーの審判をするわけです。

ですから、自己紹介では「サッカー少年」が決まり文句です。

「永遠のサッカー少年」ですね。
大学卒業後はどうされたのですか。

高校の英語教師になりました。
両親ともに教師という家庭で育ったこともあり昔から何となく教師の道かなと思っていたので、大学も教育学部英語科を専攻しました。

高校ではサッカー部の顧問になり、その仕事の中で審判をやる必要があってライセンスを取得したことが審判をやるようになったきっかけです。

サッカー部の顧問で審判というのはよく聞く話ですが、そこからJリーグ審判へはどのようにつながるのでしょうか。

なぜJリーグの審判を本格的に目指すようになったのかは実はあまり覚えていないのですが、スポーツの世界は先輩に言われたら「Yes orはい」なので、気が付いたらJリーグの試合に関わらせてもらえていた、という感じです(笑)。

ただ、小学生から夢だった舞台で自分も直接関わることができるというのは大変な喜びで、その幸せは十分感じています。

【試合前セレモニー時の様子。スタジアムに漂う緊張の雰囲気を味わう最高の瞬間です】

審判を続けるために生命保険会社に転職

サッカー少年の夢が実現したわけですが、その後はどうされたのですか。

残念ながら様々な事情があり、高校教師と審判の両立が難しくなったため、約6年で退職しました。
仕事とサッカーの審判、どちらを選択するかはかなり悩みました。
私は進路指導もしていたので、生徒たちに「夢とはなんぞや」みたいなことを偉そうに語っていました。その私が自分の夢である審判を諦めるというのはダサいと思い、高校を辞めることにしました。

転職先についてはいろいろ考えましたが、元々数字を見るのは苦手ではなかったので、生命保険会社に転職しました。

生命保険会社ではどのような営業をされましたか。

生命保険という商材を単に営業で提案していくのは難しいので、何か別の切り口はないかと考えました。
そこで、中小企業の経営者は資金繰りに悩んでいる方が多いことに気づき、資金繰り改善の提案を一緒にしながら、リスクヘッジの1つの手段として保険を提案させていただくという営業スタイルを取りました。よくよくお話を伺うと、そもそも保険の入り方から間違っている経営者も多かったですね。

お陰様で営業成績は比較的良かったため、MDRT(注)にも毎年選出されました。

(注)MDRTのサイトより
https://www.mdrt.jp/
1927年に発足したMillion Dollar Round Table(MDRT)は、卓越した生命保険・金融プロフェッショナルの組織です。世界中の生命保険および金融サービスの専門家が所属するグローバルな独立した組織として、500社、70カ国で会員が活躍しています。
MDRT会員は、卓越した専門知識、厳格な倫理的行動、優れた顧客サービスを提供しています。また、生命保険および金融サービス事業における最高水準として世界中で認知されています。

MDRTに選出されるということは、保険営業でかなり優秀な成績を修められたんですね。

MDRTに選ばれたことで、ネットワークも広がり保険や金融の知識だけでなくマインドセットの面でも大いに勉強させてもらいました。

加えて、MDRTは一度選出されたら維持されるものではなく、毎年ゼロから営業成績を積み上げないといけないので、新規開拓にも力を入れました。営業力を鍛える面でも良かったです。

審判を続けるために独立

生命保険会社の後はどうされたのですか。

審判を続けながら仕事も比較的順調だったのですが、残念ながら様々な事情があり、生命保険会社と審判の両立が難しくなってしまいました。
仕事を取るか、審判を取るかというデジャヴ(既視感)です。

ここでもどうしようかと迷ったのですが、クライアントである社長さんに話をしたところ、「だったら、自分でやればいいじゃん」と言っていただきました。
「そうか、誰にも何も言われないようにしよう」と決意し、退職して独立することにしました。

ここでもサッカー少年を貫いたんですね。
独立した当初は顧客の獲得に苦労する場合が多いですが、梅田さんはどうでしたか。

有難いことに保険営業時代のクライアントから顧問契約を頂いたり、他の会社を紹介頂いたりした結果、現在は7社と顧問契約を締結しています。パートナーCFO養成塾の受講中にも1社増えました。
とくに、私が独立することを後押しして頂いた社長には、いろんなご支援を頂いています。

独立1年で顧問先が7社とは順調ですね。
やはり保険営業でMDRTに毎年選出されるだけあって、クライアントをしっかり掴んでいるんですね。
クライアントを獲得する秘訣は何かありますか。

先ほども言った通り、資金繰りに苦労されている中小企業が多いので、社長さんに売掛金はきちんと管理されてますか、とアプローチすることが多いです。

売掛金の回収を依頼しに行った先の会社から、「うちの資金繰りも見てくれ」と依頼されたこともありましたし、取引銀行に一緒に相談に行くとその銀行から他の会社を紹介されたりと、売掛金をフックにするとクラアントは広がりますし、クライアント企業の真の貢献にもなるので、CFOだからこそできる価値提供だと自負しております。「商売みんなで繁盛」が私のキーワードです。

顧問料はどのようにされていますか。

まずは、その会社が新卒の事務員を雇う金額と言っています。
仕事を始めて実績が出てくると、色をつけてください、といった感じですね。

サービスラインナップを増やすために養成塾を受講

独立されてから順調に歩んでいるように見えますが、養成塾を受講された理由はなんですか。

独立して一人でやっていると寂しかったというものありますが(笑)、もっともっと勉強しなければならないと思い、いろいろと検索しているうちにパートナーCFOという存在を知りました。

講座の説明を受けて、3つのことが期待できると思い申し込みました。
まず、私のサービスラインナップ充実と、知識を体系的にブラッシュアップができることです。実務と知識をつなげることで、より解像度の高いサービス提供が実現できると確信しました。

2点目は、私のメンターを探していたからです。一人でやっているとわからないことや迷うことも多いので、専門家でもあり、実務家でもある高森さんから直接ご指導いただける機会はとても役に立つと思いました。

最後は、一緒に学ぶ仲間の存在です。さまざまなバックグラウンドを持ったプロフェショナルの方々から得られるものは大きいと思いました。コンサルタントは孤独になりがちであるからこそ、何でも相談できる同志の存在は貴重だと思いました。

受講されてどんな学びがありましたか。

いろいろありますが、中小ベンチャーCFOの仕事全体を表したマトリクスは、見た瞬間に「これだ」と思ったくらいインパクトがありました。

それまで、資金繰りをクリアしてしまったら財務面では上場する以外は用無しじゃないかと思っていました。
しかし、マトリクスを学ぶことで、経営者や企業が抱えるいろんな課題を解決するサービスを提供できることがわかりました。

さきほど、養成塾を受講中にクライアントを1社獲得されたと伺いました。詳しく教えてください。

受講する前のクライアントは、業歴が長い企業が多く、しかも創業社長で年齢が60代前後という会社が多かったのですが、養成塾でベンチャー企業の経営について知るうちにもっとクライアントの幅を広げたいと考えるようになりました。そこで、自分のまわりで「ベンチャー企業とも関わりたい」と言うようにしていたら、実際にご紹介いただけました。

それは凄いですね。どんな会社ですか。

ITコンサルティングの会社で、東南アジアでエンジニアを抱えている会社です。
紹介いただいて私からプレゼンテーションをして契約いただいたのですが、正直言ってベンチャー企業のニーズに今の自分が全て応える自信があるわけではありません。
ただ、困ったときに相談できる仲間、あるいはバトンタッチしてくれそうな仲間がいるコミュニティとして日本パートナーCFO協会があるので、とても心強いです。

【P-CFO養成塾第4期最終日の一枚。週末はサッカーの試合が入ることも…オンライン振替や後日動画配信を利用して無事修了】

サッカーと経営、審判とコンサルティングの共通点

これまでサッカーの審判を続けるために転職し経営コンサルティング業にたどり着いたわけですが、両者の共通点のようなものは何かありますか。

一瞬でしか味わえないことがあるのが共通点だと思います。
サッカーのプレーは一瞬一瞬の判断の積み重ねで、ディフェンスであればゴール手前に攻め込まれてファウルをしてでも防ぐこともあるでしょうし、そんな究極の場面にならないように未然に防ぐことも必要で、そこには戦略が必要になります。

経営判断も右か左かギリギリの判断の連続ですが、ゴール手前にならないように事前に手を打っていくのが経営戦略だと思います。

審判とコンサルティングという観点では、どちらも一線のプレーヤーではないことは同じで、サッカー選手あるいは経営者を支える立場です。審判やコンサルタントとしての判断は勿論しますが、プレーヤーたちが下す判断を身近で見ることができる面白さがあります。

その瞬間の判断は本能的なものも重要ですが、振り返ったときに理論が立てられるか、再現性があるかを考えるようになったのは、サッカーのコーチたちから叩き込まれたからですね。

今後は事業承継支援も行い、3つのC.F.O.を追求したい

最後ですが、審判は何があってもやり続けるとして、経営コンサルタントやパートナーCFOとして、今後やりたいことは何かありますか。

ベンチャー企業のような若い企業のクラアントは、引き続き増やしていきたいです。

あとは、これまで関わらせていただい埼玉県の企業は、事業承継についてとても悩んでいるので、何らかのお手伝いができればと思っています。スモールM&Aなども手掛けていきたいですね。
これまで地元埼玉には大変お世話になってきたので、地元に貢献できることがあればやりたいです。

私は、「My Vision」として「3つのC.F.O.」を追求しています。
  ①Chief Financial Officer     日本経済の参謀役
  ②Chief Football Officer      サッカー界の黒子
  ③Chief Future Officer         夢を語れるオヤジ

①のC.F.O.は、パートナーCFOとして進化していけばなれると確信しています。
②のC.F.O.は、審判としてのスキルを高めることは勿論ですが、それ以外のことでもサッカー界に貢献したいと思っています。
③のC.F.O.は、①と②の両方に関わってきますが、たとえば中小企業の事業承継支援は、次世代の経営者が語る夢の実現のために貢献できます。サッカーでいえば、ジュニア世代に対してサッカーをやることで得られる夢や可能性を語ることだと思っています。

「3つのC.F.O」は梅田さんの人生そのものなんですね。
とくに③Chief Future Officerは、教育者としてのご経験が反映されていますよね。素晴らしいビジョンだと思います。
本日は大変興味深いお話をありがとうございました。

(編集後記)
梅田さんは審判をやるためには転職を厭わない方ですが、決して仕事をおろそかにせず、それぞれの仕事で抜群の実績を残してきたことは素晴らしいと思います。
とくに独立してからのクライアントの獲得を伺うと、生命保険会社で培った営業力もあるのかもしれませんが、それ以上に梅田さんの「人徳」のようなものを感じました。
これからも、平日は経営コンサルタント、週末は「永遠のサッカー少年」をしながら「3つのC.F.O.」として活躍されることを期待しています。

<取材・文>第2期生 森本哲哉
取材日:2022年1月14日

【梅田さんの仕事道具】

【審判7つ道具】
試合で実際に使うアイテムです。
ライセンスを意味しているワッペン、ホイッスル、イエロー&レッドカード、時計x2(1つは予備)、記録用紙ホルダー、ペン、万歩計(どのくらいのスピードで走ったか等計測します)