名古屋拠点の事業承継コンサル×パートナーCFO
~あとつぎ社長の真の経営パートナーとして、100年企業を支える存在に~
イグニスコンサルティング株式会社 代表取締役
諏訪 喜洋(すわ よしひろ)さん
今回ご紹介するのは、パートナーCFO養成塾第5期生(2022年6月~11月)の諏訪喜洋さんです。
諏訪さんは、税理士と事業承継コンサルティングファームでの経験を経て、2023年7月にイグニスコンサルティング株式会社を設立。現在は愛知県名古屋市を中心に、中小企業の事業承継コンサルティングを展開されています。事業承継から後継者への経営サポートまで伴走するスタイルには定評があり、経営者や後継者からは「カウンセラーのようで、今後やるべきことが明確になり、迷いがなくなり気持ちが楽になった」との評判を得ていらっしゃいます。
そんな事業承継コンサルタントとしてご活躍の諏訪さんに、現在のお仕事の内容や今後の事業展望、パートナーCFO養成塾で得たものなどをお伺いしました。
【プロフィール】
イグニスコンサルティング株式会社代表取締役。
愛知県一宮市出身。大学卒業後システムエンジニアを経て、2013年(平成25年)に税理士登録。会計事務所・税理士法人での勤務の後、事業承継に特化したコンサルティンググループへ転身。300社超、2万時間超の経験の中で、後継者が経営経験を積むこと、自社株の承継コストを抑えることを同時に解決する方法を徹底的に研究。その結果をもとに自身が思い描く後継者への経営サポートを実現すべく、2023年7月に独立しイグニスコンサルティング株式会社を設立。「『あなたの会社を100年企業に!』することで、雇用の創出、そして家庭の幸福や日本経済の活性化」を実現する」という理念のもと、「後継者の真の経営パートナーになる」ことを役割(ミッション)とし、愛知県名古屋市を中心に事業承継や後継者の経営参謀のコンサルティングを行っている。
趣味は47都道府県の旅行、ご当地産業の見学、お土産探し、甘いもの、そしてマラソン。
イグニスコンサルティング株式会社 https://ignisc.jp/
2023年7月に事業承継コンサルティング会社を設立し、独立開業
――早速ですが、諏訪さんの現在のお仕事について教えてください。
イグニスコンサルティング株式会社の代表取締役として、名古屋を中心に愛知県やその近隣県の中小企業の経営者向けに、事業承継コンサルティングを行っています。経営者の目標達成を支援する実現支援型とコーチングを通じた伴走支援型、この2つのアプローチを軸に展開しています。
――ちなみに、この社名「イグニスコンサルティング」の由来は何でしょうか。
「イグニス」とは、ラテン語で「篝火(かがりび)、炎」を意味します。私は、そこから3つの想いを社名に込めました。
一つ目は、暗闇の中を導く「炎」として中小企業の経営者を支え、彼らが直面する不確実性や困難に光を当て方向性を示すこと。二つ目は、企業の価値観や強みを後世に継承し、会社の「灯」を後世につなげていくこと。三つ目は、事業承継の過程で幅広いサポートを提供するために、同様の志を持つ仲間たちと共に地域や日本を元気づける「かがり火」となることです。
システムエンジニアから「税理士→事業承継コンサルタント」へのキャリアチェンジ
――現在は、事業承継コンサルティングを展開されていますが、事業承継に注力するようになったきっかけは何ですか。
10年ほど税理士として税理士法人で勤務していた時、中小企業経営者の事業承継に対する悩みに触れる機会が数多くありました。そこで、税理士として出来ることの限界を実感し、数年前にコンサルティングファームに転職しました。経営コンサルティングであれば税理士という立場を越えて事業承継の問題解決により効果的にアプローチできるのではと考えたのです。現在は独立して、事業承継コンサルティングに集中的に取り組んでいます。
――諏訪さんのキャリアを拝見しますと、社会人になってから税理士になられたのでしょうか。
はい、システムエンジニアから税理士へキャリアチェンジし、そこで税理士として働くなかで中小企業の事業承継に対する情熱が芽生え、37歳でみらいコンサルティンググループに転職しました。
世間一般的には35歳を超えてのコンサル業界に入るのは厳しいという話もありましたが、どうしても事業承継の仕事をしたいという強い想いがあってコンサル業界に飛び込み、独立前の6年間は、税理士ではなく事業承継コンサルとして仕事をすることができました。
「次の走者がより速く走れるように」現経営者から後継者への事業承継のスムーズなバトンパスを後押し
――現在は、税理士とは異なる軸で事業承継に取り組まれているとのことですが、事業のターゲット顧客や強みなどを教えてください。
主要顧客は、社歴が30~70年の事業承継ステージにある中小企業です。
事業承継を控えた現社長と事業承継後の後継社長、どちらからも相談を受けることがありますが、課題としては大きく二つに分けられます。一つは事業承継自体の壁で、株式や資産の引継ぎや経営ノウハウ、取引先の引継ぎなどです。そして二つ目は、事業承継後の経営革新の壁で、先代のビジネスモデルの持続や新事業の展開、組織マネジメントなどです。
私は事業承継と経営革新の両面でのサポートを提供していて、クライアントがこれらの壁を乗り越えるための伴走支援を行っています。事業承継の支援では経営革新までカバーするコンサルは多くはないので、これが私のサービスの強みであり、差別化にもつながると考えています。
学生時代の陸上競技の経験から、私は「事業承継は陸上競技のリレーのようだ」と考えています。リレーでは、次の走者がより速く走れるようにバトンパスをスムーズに行うことが重要です。事業承継も同じで、現経営者から後継者にスムーズにバトンをパスし、後継者が事業を継続・発展させていくことが重要です。この考えに基づき、税金や相続対策だけでなく、後継者が現経営者から事業を引き継いだ後の事業の継続・発展や企業磨きの視点を重視しています。
――事業承継はなかなか他者に相談しにくいことだと思われますが、どういう経路でクライアントになるのでしょうか。顧客との接点の持ち方で工夫されていることがあれば教えてください。
たしかに、事業承継は時には経営者や後継者の個人や家族のセンシティブな領域に触れることもあるので、お客様は、信頼できる士業やコンサルタントの方々からの紹介が多いです。
そもそも事業承継の支援では多くの士業や専門家の協力が必要で、かつ将来に渡るサポートが必要な分野です。これら専門家の方々と協力し、お互いの将来の目標や価値観を共有することで、強力なパートナーシップを築くことは重要だと考えています。そのため、私は普段から様々な士業や専門家と会うことに時間を割いていますし、信頼関係を築くことを重視しています。独立起業してから、徐々にお客様を紹介いただけるほどの信頼関係ができた先が増えてきているので、これからもこのような関係を一つずつ増やし、中小企業の事業承継支援に取り組んでいきたいと考えています。
仕事のやりがいは、事業承継後に経営者の喜びや安堵の声を聴くこと。そして経営者との対話を通じ、人生観や仕事観を学ぶこと
――今のお仕事で感じるおもしろさややりがいはどういったものでしょうか。
私がご支援する企業の多くは、社歴が長く、地域を代表する企業や地域に根差した企業です。地域の雇用やインフラを支える、地域にとって重要な存在だと思うほど、何としてでも事業承継を成功させたいという思いも強くなりますし、その企業の事業承継プロジェクトが無事に完了し、社長からの喜びや安堵の言葉を聞けたときは喜びや大きなやりがいを感じます。
もう一つ、社長と話をしたり、接すること自体が好きです。事業承継で出会う経営者は、60歳から80歳の人生の先輩が多く、事業で成功を収めている方ばかり。彼らとの対話や、立ち居振る舞いや価値観を間近で見て感じることで、私自身の人生観や仕事観を見つめ直す機会が多くあります。
――経営者のお話を聞く際に諏訪さんが意識していることは何ですか。
傾聴と承認です。山あり谷ありの豊富な経験をお持ちの経営者の方々ばかりで、普段はなかなか耳にすることのないお話もお聞かせいただくことが多いです。経営者の原体験や価値観がその会社の存在意義や理念に通じていることも多く、傾聴と承認を意識して話を聞くことは、会社の強みを理解する上で非常に重要な仕事の一つです。
事業承継を通じて再認識した経営者の感情に寄り添ったアプローチとコミュニケーション
――これまでのキャリアの中で、節目となる印象的なエピソードがあれば教えて下さい。
37歳で事業承継コンサルの仕事に就いた時のことです。私は「やりたかった仕事ができる」と胸が高鳴り、事業承継関連の書籍を読み込んで勉強し、終電で帰るのも当たり前というほど仕事に没頭していました。税理士としてのバックグラウンドもあり、熱意と自信を持って事業承継支援に取り組んでいました。ところが、現実は理想通りにはいかず、自分が担当していた事業承継プロジェクトが思うように進みませんでした。社長に会社の税務や経営スキームの提案をしても話が進まない、そんな期間が1年半ほど続いて、本当に辛い時期がありました。
そんなある日、私は社長の最大の関心事は何なのかを改めて考え直し、ある社長に「事業承継で実現したいことは何ですか?」と尋ねました。
すると「事業承継すると会社に関われなくなるのが嫌だ」「わが子のように育て、苦楽を共にしてきた会社だから出来ることなら何か関わっていたい」という社長の本音を知ることができたのです。
そこで初めて、自分が理論的なことばかり話していたことに気付き、この時以来、社長の感情や社長と会社の未来に焦点を当てた提案を行うよう意識と話し方を変えたところ、事業承継のプロジェクトがスムーズに進むようになりました。以前の私は、理論100%の超理論的アプローチでしたが、今では理論20%:感情80%のバランスを心がけています。
これが私にとって大きな転機であり、今の私を形作る、事業承継のアプローチや経営者とのコミュニケーションを変える原点となった出来事です。
パートナーCFO養成塾は「独立開業に向けた環境作り」として受講。仲間づくりのために名古屋から新幹線でリアル講義へ
――パートナーCFO養成塾への入塾のきっかけや目的を教えてください。
独立開業を考え始めていたときに、パートナーCFO養成塾の存在を知ったことがきっかけです。以前からCFOという職種に強い興味と憧れを持っており、将来的には社外取締役の職に就きたいと考えていました。独立開業することへの不安はありつつも「思い切って行動する時」だと考えていたタイミングで養成塾を知り、独立に向けた環境づくりのために入塾を決めました。
パートナーCFO養成塾はオンライン受講も可能でしたが、パートナーCFOに興味を持つ方や高い志を持つ方との交流や仲間作りが自分自身をもう一歩前進させることになると思ったので、「東京リアルクラス」を選択し、愛知県から東京まで毎月新幹線で通うことにしました。
養成塾で学んだ「経営の役割分担」を伝え、後継社長が「経営の仕事に専念する」よう後押し
――パートナーCFO養成塾の講義で最も印象に残っている講義内容を教えてください。
第1回の講義が一番印象に残っています。特に「CEOは理念を唱えるドン・キホーテ、COOはオペレーションを率いる番頭、CFOが経営管理する参謀」という経営の役割分担の考え方が、非常に印象深いものでした。
養成塾講義を通じて経営の役割分担の考え方を理解できたことで、クライアント企業の後継者に対して「経営の仕事は範囲が広い、一人で全部を背負う必要はない」「現場の仕事はCOOに、バックオフィスの仕事はCFOに任せ、社長自身は自分の仕事に集中しましょう」と伝えられるようになりました。そして実際に経営の役割分担を行ったことで、後継者社長が本来やるべき経営の仕事に専念することができるようにもなりました。
他にもパートナーCFO養成塾で得たものや学びが経営課題の解決に役立っていることを実感しています。高森さんがまとめてくれた膨大な量の知識やツールは、実務で即戦力となる効果をもたらしてくれますし、8マトリックスを土台とした経営の8要素に基づくアプローチは、企業経営全体の最適化につながっています。
T-GROWモデルと経営の役割分担の概念をもとに、経営者の悩みや迷いを解消
――パートナーCFO養成塾の学びが特にお仕事で生きた場面があれば教えてください。
経営の役割分担の考え方と、コーチングのT-GROW モデルを活かすことができた場面もありました。ある社長が60歳を目前にご自身の引退を考えながらも、借入負担の解消方法に頭を悩ませていて、社内には相談相手もいらっしゃらない様子でした。
そこで私は、T-GROW モデルを活用して会社としての将来ありたい姿を伺い、経営の役割分担の重要性もお伝えしました。
「今の社長はCEO、COO、CFOの役割をすべて一人で抱えてらっしゃる。COOの役割は現場の幹部に任せるとか、CFOはお金周りに強い私みたいな人間に役割分担すると良いですよ」という話をしたところ、面談後に「普段はできない話ができ、すごく楽しい時間だったしすっきりした。諏訪さんはカウンセラーみたいだね」とまで仰っていただきました。
実は、最近その社長と再会し、「当時は何をすべきかわからなくて迷っていたけど、諏訪さんと話したおかげで今はやるべきことがはっきりして迷いがなくなった。本当に助かった。ぜひ、これから私の会社の面倒を見てくれないか」とお声掛け頂き、今まさに商談として進んでいます。この一連のやり取りでは特に養成塾で学んだことが活かせ、その後の成果に繋がっていることを非常に嬉しく感じています。
経営者のディスカッションパートナーとして「頭を貸す、経験を貸す、人脈を貸す存在」でありたい
――パートナーCFOとしての今後の展望について教えてください。
将来的には経営者のディスカッションパートナーとして「頭を貸す、経験を貸す、人脈を貸す存在」になりたいと考えています。「ディスカッションパートナーと言えば諏訪」と言われるようブランディングしていきたいです。
中小企業の経営者は相談相手がいなくて孤独であるという話はよく耳にしますが、実は会社や自分のことに関して自分の胸の内をさらけ出せる相手を、潜在的に求めているのではないかと思います。私が専門領域としている事業承継では、特に後継者や家族に関するセンシティブな深い話もあるので、ディスカッションパートナーは経営者にとって有意義な存在になると考えています。
愛知県・東海エリアで事業承継×パートナーCFOを増やし、企業の成長に寄与したい
――諏訪さん個人としてのこれからの展望はいかがでしょう。
愛知県を中心とした東海エリアで、パートナーCFOを普及させたいと考えています。
私が受講した当時(2022年、第5期)までは、東海エリアから参加する人は珍しかったこともあり、それなら自分が体現していこうと考えています。
また、私の専門領域の事業承継とパートナーCFOは非常に相性が良いと考えているのですが、私一人で支援できる事業承継案件は年間10件程度が限界です。愛知県や東海エリアの企業数や事業承継問題を考えると、まだ多くの仲間が必要なので、事業承継に特化したパートナーCFOとして活動する仲間も増やしていきたいです。この想いが実現すれば、パートナーCFO協会との関係性や相互連携も強化され、協会も愛知県・東海エリアの企業もさらに発展していくと思います。
――パートナーCFO協会で得られていること、期待していることを教えてください。
パートナーCFO養成塾で学び、パートナーCFO協会に参加したメンバーは、中小企業やベンチャー企業の力になりたいという志や熱意を持っています。みなさんそれぞれが私とは異なる人生を歩んできた人たちだからこそ、こうした仲間との出会いや協業する機会を得られることは非常に価値のあるものだと感じています。
そして、今後もより多くの素敵なメンバーが協会に加わることを楽しみにしています。現在、養成塾5期生までで100人を超えていますが、もうすぐ6期生も加わってきます。協会メンバーの増加と共に、新しいご縁が広がっていくことを期待しています。
――最後に、パートナーCFOに興味を持った方へのメッセージをお願いします。
「パートナーCFO」に興味を持っている方には、自信を持ってパートナーCFO養成塾や協会への参加をおすすめします。経営に関する知識やノウハウ、ツールも得られますし、何より同じ志を持つ仲間を得ることができます。まずは一歩踏み出して、養成塾に参加してみてください。きっと、人生を大きく変えるきっかけを得ることができると思います。
そして、経営者の方々に向けては、パートナーCFOは経営の8つの要素を総合的に理解しているため、全体最適で相談に乗ってくれる心強い存在であるということをお伝えしたいです。パートナーCFO協会には、多種多様なバックグラウンドを持つパートナーCFOが多数いらっしゃいます。きっと、経営者が求めるパートナーが見つかるはずです。ぜひ、パートナーCFO協会にお問い合わせいただき、会社の新たな一歩を踏み出していただくきっかけにしていただきたいと思っています。
<編集後記>
諏訪さんはパートナーCFO養成塾第5期・東京リアルクラスの同期生です。システムエンジニアから税理士へのキャリアチェンジ、そしてコンサル会社への転籍を経て事業承継コンサルとして独立開業。事業承継に対する熱意と行動力には敬意を表します。
インタビューの中で「ディスカッションパートナーと言えば諏訪」を目指しているというお話もありましたが、実際に養成塾の講義中や懇親会の場でも私個人の将来展望や事業構想の話をたくさん聞いていただき、新たな気付きを与えていただきました。そんな諏訪さんであれば、間違いなく事業承継コンサル×パートナーCFOとして、そしてディスカッションパートナーとして華々しい活躍をされることと思います。 諏訪さんの今後のさらなるご活躍を応援しています!
<取材・文>
第5期生 須々田智昭
取材日:2023年10月2日